ひざ関節への培養幹細胞治療の効果は?【メリットとデメリット】

ひざ関節への培養幹細胞治療の効果は?【メリットとデメリット】

公開日:2021.11.10
更新日:

再生医療分野で徐々に広がりを見せている幹細胞治療。実際、どのような疾患の治療に役立てられているのか、どのように実用化されているのか、また、ひざ関節治療の分野ではどのような効果や働きが期待できるのかについてまとめました。治療を検討されている方は、ぜひ参考になさってください

情報提供医師

武藤 真隆 医師

武藤 真隆 医師(名古屋ひざ関節症クリニック 院長)

日本整形外科学会認定 専門医

幹細胞治療とは?(どんな治療に活かされているか?)

人の体は60兆個の細胞からできており、それぞれの細胞には決まった役割があります。
例えば、筋肉になる細胞は筋肉としての役割を果たせるよう、それに見合った機能を持つ必要があります。神経になる細胞も同様に、それにふさわしい能力を身につける必要があります。
このように、それぞれの細胞が決まった役割を持つようになることを「分化」と言いますが、中には決まった役割を持たずに、様々な細胞へと変化する可能性を持つ特殊な細胞が存在します。そうした細胞のことを幹細胞と呼びます。
幹細胞治療とは、幹細胞が持つ「様々な細胞に変化する能力」をいかし、組織の修復を狙う治療です。
内臓疾患、運動器疾患、循環器系の疾患など、すでに幅広い領域の治療に応用されはじめています。

■幹細胞治療が行われている疾患領域

内臓疾患 運動器疾患 循環器疾患 美容系
・糖尿病
・肝臓疾患
・腎臓疾患
・変形性関節症
・スポーツ外傷
・半月板損傷
・脳梗塞など動脈硬化性疾患 ・薄毛治療
・アンチエイジング治療
・豊胸手術

最も実用化が進んでいる脂肪由来幹細胞治療

幹細胞には、骨髄由来のものや滑膜由来のものなどいくつかの種類が存在しますが、現在最も臨床応用が活発に進められているのは脂肪由来幹細胞です。
また、脂肪由来幹細胞を用いた治療には、幹細胞を培養するもの(ASC)と、培養しないもの(SVF)があります。現時点ではどちらが優れているかに関して明確な結論は出ていませんが、当院では前者(培養するもの:ASC)で治療を行なっています。

メリット デメリット
培養しない幹細胞(SVF) 幹細胞以外の細胞も含まれており、多彩な成長因子の恩恵を受けられる可能性がある。 投与できる幹細胞の量が少ない、または調節することが難しい。
培養幹細胞(ASC) 投与する幹細胞の量を調整できる。脂肪の採取量が少ないので低負担。 幹細胞の最適な量についてコンセンサスが得られていない(多いことが弊害になるケースもあり)。

 

培養しない幹細胞(SVF)を用いるメリットとデメリット

SVFには、脂肪を採取する際に含まれている幹細胞以外の成分も多く含まれています。このことから、各細胞から出されるサイトカインや成長因子に起因する幅広い作用が期待できると考えられています[1]。一方、幹細胞の細胞数は少ないので、多くの幹細胞を投与するには多量の脂肪を採取する必要があり、その場合、患者様に負担がかかるというデメリットがあります。

培養する幹細胞(ASC)を用いるメリットとデメリット

ASCには幹細胞の数をコントロールできるメリットがあります。また、脂肪採取に伴う患者様への負担も軽くて済みます。私たちが過去に行ったASCとSVFの比較でも、ASC群の方が脂肪採取に伴う合併症が少ないという結果でした。また、効果については差が認められなかったものの、効果が得られるまでに要する期間はASC群の方が短くなりました[2]

ただ、幹細胞の最適な量についてははっきりしたコンセンサスが得られておらず、その点がデメリットであり今後の課題と考えられます。今のところ、幹細胞の量は多い方が持続的な効果が期待できるとする報告が多いですが[3][4]、一部には細胞数が多いことで副作用を招いたとする報告も見受けられます[5]

培養幹細胞治療の効果

当院では、変形性膝関節症半月板損傷など、膝関節の治療に幹細胞治療(培養幹細胞治療)を行なっていますが、実際にどれだけの効果が期待できるかをご紹介します。

変形性膝関節症の患者さんを対象に当院が行なった調査では、培養した間葉系幹細胞(ASC)治療によって、治療後1年にわたって自覚症状の改善が認められました。また変形性膝関節症の、初期よりも進行期、進行期よりも末期の方が、治療効果が出にくいことも分かってきました[6]

同様の報告は別の医療機関からもなされています[7]

培養幹細胞治療がKOOSに与えた影響

また、幹細胞の投与は軟骨の生理的な変化に寄与したという報告もあります。海外で行われた研究ですが、生理食塩水を注射した群では軟骨の欠損が悪化したのに対し、培養幹細胞を注射した群ではその悪化が認められませんでした[8]
さらに、現時点では症例数が少なく明確な結論には至っていませんが、培養幹細胞の投与によってひざの軟骨が厚くなったという事例も確認されています[9]。痛みや炎症の鎮静化のみならず、組織の損傷回復にも期待が持てる結果であり、幹細胞治療の新たな可能性を感じさせる結果だと考えています。

培養幹細胞がひざ軟骨に与えた影響

効果の決め手は細胞の加工技術と細胞の質

幹細胞治療の効果は幹細胞の質にも大きく左右されます。つまり、いかに多くの質の高い幹細胞を抽出・培養できるかという技術的な側面も重要ということです。
細胞加工においては、特に以下の2つの技術が重視されます。

  • 幹細胞の生存率を高く保つ技術
  • 定着率の高い細胞を見極め、これを培養する技術

その点、当院の幹細胞治療のための細胞加工は、国の認可を受けた細胞加工施設「CellSource(セルソース)」で厳重に管理されています。細胞加工を自施設内で行う各医療機関も少なくないのですが、高品質の細胞を安定的に供給するため、当院ではこのような措置をとっています。

培養幹細胞治療の品質維持の取り組み

治療のリスク

幹細胞治療は患者さま自身の細胞を用いる治療なので、理論上、拒絶反応などのリスクは少ないと考えられます。実際、ひざ関節症クリニックグループの6,400例※に及ぶ事例において、これまでのところ本治療による重篤な副作用は確認されていません(治療後数日間、腫れや熱感といった症状が出ることはあります)。
ただし、医療行為である以上、リスクがゼロとは言い切れません。脂肪塞栓症(血中に脂肪が混入し血管がつまる)や感染、神経や血管が損傷するリスクも可能性としては考えられます。治療後の経過でもしご不安なことがありましたら、ご遠慮なくご相談いただければと思います。
※2015年3月〜2022年5月現在

治療のデメリットと回避するMRI検査

デメリットとしては、期待できる効果が人によって差があるということと、その割に費用が高額であることが挙げられます。つまり治療を受けたものの、効果が得られなかったという事態が生じうるということです。
こうしたデメリットを回避するため、当院では初診時に「MRIひざ即日診断」をご案内しています。治療前に、MRI検査でひざの損傷具合を詳しく調べて、実際にどの程度の効果が期待できるかを専門医が判定させていただきます。ぜひご検討ください。


ひざ関節症クリニックは再生医療等提供計画が受理されています

再生医療の提供は、再生医療等安全性確保法(自由診療・臨床研究の枠組みで再生医療を行うための法律)に則って、再生医療等提供計画を作成し、認定再生医療等委員会の厳しい審査をパスしたうえで、厚生労働省に受理された医療機関だけに認められています。
ひざ関節症クリニックのヒト幹細胞を用いた第二種再生医療等提供計画は厚生労働省に受理され、安全性のある治療を提供できる医療機関として、登録されています。
名古屋院:計画番号(PB4200024)
銀座院:計画番号(PB3180030、PB3180071)
新宿院:計画番号(PB3180003)

その他の地方院の登録は、下記よりご確認いただけます。
第二種再生医療等提供機関リスト:厚生労働省サイト

培養幹細胞治療を検討中で、ご相談を希望される方ははじめての来院予約からご予約いただけます。お気軽にお問い合わせください。

はじめてのご来院

コラムのポイント

  • 幹細胞治療とは、幹細胞を特性をいかし組織の修復を狙う治療法
  • 痛みや炎症の鎮静化のみならず、組織の損傷回復にも期待できる
  • 適性があるため、治療効果が見込めるか事前にわかるMRI検査がおすすめ

よくある質問

ヒアルロン酸注射を打っていますが、効果がありません。培養幹細胞治療の効果期間はどのくらい続きますか?

培養幹細胞治療は、ヒアルロン酸注射のように一時的な改善ではなく、長期的な改善効果が期待できます。
実際に、当院で治療を受けた患者さまからも長期的にひざの痛みの軽減が継続された報告がされています。
また、効果の見込みは事前にMRI検査より、お一人お一人しっかりと適性を診断させていただきますので、ご不安な方もまずは当院の「MRIひざ即日診断」へお問い合わせください。

培養幹細胞治療では、副作用などのリスクはありますか?

当グループでは6,400例以上※行っていますが、今まで重篤な副作用が現れたケースは1件もありません。
当院の培養幹細胞治療は人工的に作った細胞ではなく、患者さま自身の細胞を用いて行います。そのため、アレルギー反応や拒絶反応が起こる可能性はとても低いのでご安心ください。
とはいえ、ご不安なことも多いことと思います。治療方法やリスクやなど、不安や疑問等がありましたら以下よりお気軽にご相談ください。
はじめてのご来院予約
※2015年3月〜2022年5月現在

参考

  1. [1]Bora P, et al.: Adipose tissue-derived stromal vascular fraction in regenerative medicine: a brief review on biology and translation. Stem Cell Ther. 2017: 8, 145.
  2. [2]Yokota N, et al.: Comparative Clinical Outcomes After Intra-articular Injection With Adipose-Derived Cultured Stem Cells or Noncultured Stromal Vascular Fraction for the Treatment of Knee Osteoarthritis. Am J Sports Med. 2019: 47, 2577.
  3. [3]Song Y, et al.: Human adipose-derived mesenchymal stem cells for osteoarthritis: a pilot study with long-term follow-up and repeated injections. Regen Med. 2018: 13, 295.
  4. [4]Jo CH, et al.: Intra-articular Injection of Mesenchymal Stem Cells for the Treatment of Osteoarthritis of the Knee: A 2-Year Follow-up Study. Am J Sports Med. 2017: 45, 2774.
  5. [5]Agung M, et al.: Mobilization of bone marrow-derived mesenchymal stem cells into the injured tissues after intraarticular injection and their contribution to tissue regeneration. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2006: 14, 1307.
  6. [6]大鶴任彦ほか.: 変形性膝関節症に対するBiological healing 専門クリニックの実際とエビデンス構築. 関節外科. 2020: 39, 945.
  7. [7]桑沢綾乃ほか.: 変形性膝関節症に対する脂肪由来幹細胞を利用した cell therapy. 関節外科. 2020: 39, 928.
  8. [8]Lee WS, et al.: Intra-Articular Injection of Autologous Adipose Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cells for the Treatment of Knee Osteoarthritis: A Phase IIb, Randomized, Placebo-Controlled Clinical Trial. Stem Cells Transl Med. 2019: 8, 504.
  9. [9]Pers YM, et al.: Adipose Mesenchymal Stromal Cell-Based Therapy for Severe Osteoarthritis of the Knee: A Phase I Dose-Escalation Trial. Stem Cells Transl Med. 2016: 5, 847.

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