変形性膝関節症について

OA KNEE

変形性膝関節症に対する培養幹細胞治療 〜追加投与の効果を考える〜

RELEASE:
UPDATE:2019-05-10

変形性膝関節症の治療法として、従来の方法の他に再生医療という選択肢も登場しています。当院で扱う培養幹細胞治療(幹細胞を増やして膝に投与する治療法)も、その一つ。幹細胞には痛みを緩和させる効果があると確認されており[1]、実際に効果を実感されている方は多くいらっしゃいます。

これまで、培養幹細胞を単回投与した場合の成績を報告する論文は複数出されていますが、追加で投与を行った場合の効果を調査した報告はありませんでした。そこで、追加投与の効果を当院の臨床データから検討し、2019年3月の再生医療学会で発表しました。

培養幹細胞治療について

当院では、主に腹部から約20mL(おちょこ1杯分程度)の脂肪を採取します。その脂肪から抽出した幹細胞を、約6週間かけて培養。注射器で膝関節内に投与します。当院では、痛みが生じている1膝あたり1000万個以上の幹細胞を投与する。

なお、加工の工程は、厚生労働省より認可を受けた加工施設に委託しています。

長期の効果を検討

培養幹細胞治療後の痛み・関節機能スコアの変化幹細胞を用いた変形性膝関節症の治療には、これまでにもさまざまな先行研究がありました。ある論文では、WOMACという指標を使って効果を測定。これは痛みの度合いや関節の機能を数値化して評価するものですが、その平均値を算出した結果、培養幹細胞治療を受けたほとんどのケースで、治療から6ヶ月間に渡って痛みと関節機能が改善したことが分かります(右図)。なお、図中のASCとは、脂肪由来の幹細胞という意味です。
培養した幹細胞は凍結保存しておくこともできるため、本調査では12ヶ月という長期間に渡って効果を検討。6ヶ月後の経過観察時に希望があった場合は培養幹細胞を追加で投与し、調査を継続しました。

さまざまな項目別に評価

効果の測定には、KOOS(クース)という評価の指標を使用しました。これは、ひざの痛み、症状、運動機能、日常生活動作、生活の質といった項目別に評価をするもの。痛みや症状の強弱以外にも、さまざまな観点から効果を確認できる指標で、数値が高いほど良好な状態であることを意味します[2]。

先にお伝えした通り、治療から6ヶ月後に希望があれば、追加で培養幹細胞を投与し、12ヶ月まで経過を観察しました。

痛み(Pain)

培養幹細胞治療後のKOOS-Pain

培養幹細胞の投与から1ヶ月後には、スコアが大きく上昇。膝の痛みが大幅に軽減されていることを示しています。6ヶ月後に培養幹細胞の追加投与を実施したところ、12ヶ月後にかけて再び数値が上昇し、痛みの改善傾向が確認されました。

症状(Symptoms)

培養幹細胞治療後のKOOS-Symptoms

この項目は、膝の水たまりや曲げ伸ばしづらさなど、痛み以外の症状の強さを示します。これについても、培養幹細胞の投与から1ヶ月後に数値が上昇し、改善傾向を確認しました。追加注入で改善傾向は見られませんでしたが、治療前よりも症状が改善した状態は継続していることが分かります。

運動機能(Sports)

培養幹細胞治療後のKOOS-Sports

レクリエーションやスポーツといった運動機能を測るこちらの項目。治療から1ヶ月後、3ヶ月後と、スコアが上昇していることが分かります。6ヶ月後になると、やや効果が減弱するケースもありましたが、このタイミングで追加投与を行ったところ、12ヶ月目までに再び数値が上昇し、運動機能が改善傾向にあることが確認されました。

日常生活動作(ADL)

培養幹細胞治療後のKOOS-ADL

入浴や歩行など、日々の生活に不可欠な動作の総称をADLと言います。この項目についても、治療から3ヶ月後までは改善傾向で、6ヶ月後に効果がやや減弱するケースが見られました。追加投与を実施したところ、12ヶ月目まで数値は横ばいとなっています。一方、治療前よりも日常生活動作が改善した状態は継続していることが分かります。

生活の質(QOL)

培養幹細胞治療後のKOOS-QOL

趣味や仕事など、人生において幸福を見出しているかどうかを図るため、生活の質という指標が用いられることがあります。運動機能や日常生活動作のスコアと同様に、治療から3ヶ月後までスコアは上昇。6ヶ月後に効果が減弱したケースも見られましたが、追加投与の結果、12ヶ月目までに再びスコアが上昇しています。

追加投与は効果減弱の場合に検討

培養幹細胞を追加で投与した後、症状や日常生活動作には変化がなかったり、やや低下したりするケースが見受けられましたが、総合的に見ると、治療前より状態は改善していることが分かります。一方、痛み、運動機能、生活の質という3つの項目については、初回治療の6ヶ月後に追加で培養幹細胞を投与することで、12ヶ月後にかけて改善傾向を見せました。追加投与を行った場合でも、単回の投与と同様に重篤な副作用は発生しませんでした。

全ての項目において、6ヶ月後と12ヶ月後で統計学的に大きな差は見られませんでしたが、治療前より改善した状態は継続しました。ただ当院としては、追加での幹細胞投与は、効果減弱がみられてから検討するのが望ましいという見解です。培養幹細胞は複数回分の精製が可能ですが、限りがあるためです。ひざ関節症クリニックとしては今後、変形性膝関節症の進行度を示すグレード別に追加投与を行った場合の結果についても考察していく予定です。


データ集計の対象
以下の内容に則り、14人(22の膝)への治療結果をデータとして集計しました。

•当院で培養幹細胞治療(1膝1000万幹細胞以上)を受け、6ケ月の経過観察を終了した方
•6ケ月経過した時点で、希望があれば追加での投与を実施(11人、17の膝)
•追加希望のない方(3人、5の膝)も全て含め、投与前と投与後1、3、6、12ヶ月(M) の時点で効果を調査

培養幹細胞を追加投与した場合の効果検討

ページの先頭へ戻る