変形性膝関節症について

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変形性膝関節症の運動療法【その効果とトレーニングメニューを公開】

RELEASE:2019-01-29
UPDATE:

変形性膝関節症と診断を受けた際に医師から運動療法を勧められた方や、運動が効果的だという情報をインターネットで見聞きした方、多いのではないでしょうか。運動療法の効果は医学的にも根拠がありますので、ぜひ積極的に行ってください。杖なしでは歩行困難だった70代の女性が、3ヵ月のトレーニング後、杖を使わず颯爽と歩けるようになったという実例も、当院のトレーナーが経験しています。

そこで、おすすめの筋力トレーニング・ストレッチをご紹介したいと思います。膝の動きに関係する筋肉をトレーナーに選んでもらい、重要度順に運動の方法をまとめました。ぜひ実践してみてくださいね。

運動療法には医学的根拠がある

運動療法の目的を一口に言うと、変形性膝関節症の進行を遅らせることです。進行してしまうと、一般的には手術療法が検討されるため、いかにそれを回避するかが大切なのです。手術ではない治療法をまとめて保存療法と言いますが、その中で特に大切なのが、運動療法というわけです。

膝関節が重度の変形を来している方には効果がないケースもありますが「変形性膝関節症が進行している人にも運動療法は推奨できる」とする学術論文も、イランの研究チームが発表しています[1]。

さらに、別の文献では「鎮痛剤などの薬物療法、鍼治療のような物理療法といった受け身的な治療は、あくまでも痛みを制御する一つの手段として用いるべきである」としています[2]。運動療法だけで取り切れなかった痛みを緩和するための補助として行うのが薬物療法や物理療法とお考えください。そのように考えると、運動療法は自発的なものですから、鎮痛剤などとは少し違った治療法と言えるでしょう。薬物に頼らないことで、痛み止めの多用による胃腸障害や副作用のリスクを軽減できるなど、適切な方法で行いさえすれば良いことづくめの治療が運動療法なのです。

具体的な方法を解説する前に、運動療法で得られるメリットについてご紹介します。本当に効果があるのかと疑いながらではなく、こんな効果があると信じて行うほうが、より運動へ積極的になれるからです。

運動しないと痛覚が過敏になったり、炎症が助長されたりする

変形性膝関節症の方がまず注意すべき点は、安静にしすぎることです。もちろん、膝に強い痛みがある場合は無理に運動しないほうが良いですが、そうでなければ積極的に動かしていくのが望ましいでしょう。と言うのも、運動をしなくなると、痛みを感じる痛覚(つうかく)が過敏になってしまうため。関節や筋、筋膜を動かさずにいると、体内で炎症を引き起こす物質が誘発され、より痛みを感じやすくなってしまうとされています[2]。これを防ぐためにも、適度な運動が必要なのです。

実際に、炎症を引き起こす物質は運動をすることで発生しにくくなるほか、軽度の炎症を伴う慢性的な痛みが軽減される可能性も示唆されています[3]。

運動療法のプログラム終了後、恐怖心も小さくなっていた

変形性膝関節症を患う男女44名が運動療法のプログラムを行い、効果を測定したところ、運動プログラムの終了後に膝の痛みが改善。それだけでなく、運動することに対する恐怖心も小さくなっていたという報告もあります[4]。

痛みがあるときは安静にしていようと考える人が多いはずですから、運動すると痛みが悪化してしまうのでは? と怖くなるのも無理はありません。論文の最後では「運動開始前に強い恐怖心を感じている場合、すぐには効果が現れないことがわかった。将来的な痛みの改善具合を考えるならば、運動療法の開始前に、どれだけ恐怖心や痛みが強かったかを把握しておくことのが望ましい」と結論づけられています。

人間ですから、なかなか効果が出なければ、投げやりな気持ちになってしまうかもしれません。運動開始前の状態をしっかり把握しておくことで「始める前はあれだけ痛みが強かったのだから、少しずつ」と、前向きな気持ちを保つことができるのではないかと思うのです。

トレーニング・ストレッチの部位別メニュー

運動療法を重視する当院には、メディカルトレーナーが在籍。日々、患者さまへ指導を行っています。膝を専門としてリハビリを提供する当院トレーナーが、どの筋肉にどのようにアプローチすべきか教えてくれました。

膝と関係する筋肉は多数あります。例えば太ももの大腿四頭筋には、膝関節にかかる負荷を吸収する役割があり、変形性膝関節症の症状を改善するためには、特に重点的に鍛えるべき筋肉です。

それぞれの筋肉の役割

上図のように、筋肉はそれぞれ異なる役割を持っています。そのため、部位別におすすめのトレーニングとストレッチを選んでみました。重視していただきたい順に、目的も添えてご紹介していきます。鍛える部位を意識しながら、下記の注意点を守った上で実践してみてください。

  • ストレッチには、膝関節を曲げる動作を必要とするケースがあります。膝を曲げにくい方や、曲げると痛みがある方には、そのストレッチは推奨できません。
  • 初期や末期といった変形性膝関節症の重症度とは関係なく、身体の状態が悪ければ自力で行うことが困難な場合もあるため、無理に行うのは禁物です。
  • 病院やリハビリ施設などで、医師や理学療法士などから運動療法の指示を受けている場合は、その指示に従ってください。指示を受けていないという人も、一度確認を取っておくと安心です。

変形性膝関節症の人が最優先すべき【大腿四頭筋】

運動療法として最優先すべきは、太ももの前側にある大腿四頭筋を鍛えることです。先述の通り、大腿四頭筋には膝関節への負荷を和らげるクッションのような役割があるため、膝への負荷を軽減すべき変形性膝関節症の方にとっては、特に大切な筋肉です。

【トレーニング】大腿四頭筋のトレーニング
①椅子に座り、片足をまっすぐ伸ばします(※1)。
②伸ばした足を椅子の高さほどまで上げ、10秒間保ちます(※2)。
③足を下ろしたら数秒間休みます。
④再び①から行い、20回繰り返します。
※1:膝をまっすぐ伸ばすと痛む場合は、少し曲げた状態でも構いません。
※2:足首は前方を向いていても、手前を向いていても大丈夫です。

【ストレッチ】
大腿四頭筋のストレッチ①横向きに寝そべり、上になった脚の膝を曲げます。
②曲げた脚の爪先を持って後方に引っ張り、太ももの付け根から筋肉を伸ばします。
③15秒ほど保ちます。

O脚の進行を防ぐ【内転筋群】

太ももの内側にある内転筋群は、脚を閉じるときに作用する筋肉。ここが弱くなると太ももが外側に開きやすくなり、O脚が進行する原因に。しっかり鍛えましょう。

【トレーニング】内転筋群のトレーニング①横向きに寝転がり、上の手は胸の前に、下の手は頭を支えるようにします。
②上の膝を立てます。
③3秒かけて、下の脚を可能な範囲でゆっくりと持ち上げます(※)。
④3秒かけてゆっくり下ろします。⑤3セットを目安に行います。
※上半身の姿勢が崩れたり、上げている脚の膝が曲がったりしないようにしましょう。

【ストレッチ】内転筋群のストレッチ
①片脚を伸ばし、逆の脚を内側に曲げます。
②伸ばした脚と直角になるよう、同じ側の手を前方に置きます。
③背筋を曲げないように、身体を前方に倒していきます。
④太ももの内側から裏側にかけて伸びていると感じるところで、20〜30秒ほとキープします(※)。
※:倒すときに、伸ばしている脚が前に倒れないよう気をつけましょう。痛いと感じない程度に行うのが大切です。

膝の左右への安定感を高める【中殿筋】

お尻の横側にある中殿筋という筋肉が弱ると、痛む足に体重をかけたとき、その反対側に骨盤が傾くトレンデレンブルグ兆候が生じやすくなります。その状態で歩けばヨタヨタと不安定な歩き方になり、無理な姿勢から膝関節への負荷が増大。変形性膝関節症が進行してしまう要因にもなり得るため、中殿筋を鍛えておいて損はありません。

【トレーニング】中殿筋のトレーニング①横向きに寝転がり、上体は起こして両手を地面に置きます。
②上側の脚を3秒かけて上に上げ、3秒かけて下ろします。
③10回行いましょう(※)。
※背中が反ったり、上げた脚の膝が曲がったり、爪先が天井に向いたりしないよう気をつけましょう。

【ストレッチ】中殿筋のストレッチ
①仰向けに寝転がります。
②ストレッチしたい側の膝を曲げ、反対側の足のほうへ近づけていきます。
③膝を手で押さえながら、中殿筋をストレッチします(※)。
※両肩を地面につけたまま行いましょう。浮かせてしまうと、中殿筋に働きかけることができなくなります。

膝の曲げ伸ばしを安定させる【ハムストリングス】

太もも裏側にあるハムストリングスという筋肉が伸縮することで、膝の曲げ伸ばしが可能になります。人の動作ほとんどに関係するのが膝の曲げ伸ばしですから、ここが弱ってしまうと、日常生活に支障が出る可能性が高まるということ。しっかり鍛えておきましょう。

【トレーニング】ハムストリングのトレーニング
①うつ伏せになり、チューブを両足首に巻きます。
②片方の膝を曲げ、足首をゆっくりと持ち上げます。
※左右それぞれ、10回ずつ行いましょう。週に2〜3回程度が目安です。

【ストレッチ】ハムストリングのストレッチ
①仰向けに寝転がり、片脚を挙げます。
②足の裏にタオルをかけ、両手でタオルを持ちます。
③膝を伸ばした状態のまま、可能な高さまでゆっくりと足を挙げていきます。
※無理に足を高く上げる必要はありません。膝を伸ばすことに意識を集中してみてください。

段差の上り下りを助ける【腓腹筋】

ふくらはぎの筋肉が弱くなると、足を蹴り出す力が弱くなります。特に困りやすいのが、段差の上り下り。これを改善するには、ふくらはぎの腓腹筋(ひふくきん=下腿三等筋)を鍛えましょう。

【トレーニング】腓腹筋のトレーニング
①手すりやテーブルなどに掴まって直立します。
②反動をつけず、ゆっくりとかかとを挙げていきます。
※朝・昼・晩にそれぞれ20回ほど行いましょう。

【ストレッチ】腓腹筋のストレッチ
①壁や手すりなどに向かって身体を支えながら、足を前後に開きます。
②ゆっくりと後ろの脚の膝を曲げながら、アキレス腱を伸ばします。
③その状態でゆっくりと上体を前に出し、後ろの脚の膝を伸ばします。
④頭からかかとまで、一直線になるように意識しながら、10秒間キープします。
※左右それぞれ、5回ずつ行いましょう。

歩行を改善する【足底筋群】

歩行を改善するためには、膝周りだけでなく、足裏にある足底筋群(そくていきんぐん)の運動が効果的。身体全体のバランスを保つためにも必要な筋肉です。

【トレーニング】足底筋群のトレーニング
①椅子に座り、左右どちらかの足の下にタオルを敷きます(※1)。
②足指と足裏を使い、タオルを手前にたぐり寄せていきます。
③ある程度タオルをたぐり寄せたら、逆の足も同様にします(※2)。
※1:膝の角度が90度になるように座りましょう。
※2:左右の足で2〜3回ずつ、休憩を取りながら行いましょう。タオルの隅におもりを置くなど、徐々に負荷をかけていくのも効果的です。

【ストレッチ】足底筋群のストレッチ
①膝を曲げた状態で、手を使って足の指先を押さえ、反らせます。
②ゆっくりと膝を伸ばしていき、脚の裏からふくらはぎにかけて伸びるよう意識します。
※1回30秒ほどを3セット行いましょう。

脚をしっかりと上げる【腸腰筋】

腸腰筋(ちょうようきん)は、腰の骨と太ももの骨を繋いでいる筋肉です。ここが弱くなると、脚がしっかりと上がらなくなったり、姿勢の保持が難しくなってしまいます。歩行や階段昇降などの際につまづいてしまう危険性もあるため、しっかりと鍛えておきましょう。

【トレーニング】腸腰筋のトレーニング
①膝の角度が90度くらいになるよう、椅子に浅く座ります。
②お腹に力を入れながら、可能な限り背筋を伸ばします。
③足踏みをするように、太ももから上に持ち上げます。
④左右交互に足踏みをします。
※片脚15回ずつが目安です。背中が丸くならないように気をつけましょう。

【ストレッチ】腸腰筋のストレッチ
①脚を前後に開いて、後ろの膝をつきます(痛みがある場合はつかなくてもOKです)。
②腰を前に出すようにして、伸ばしていきます。
※腰を反りすぎると腰痛を引き起こす恐れがあるため、注意しながら行いましょう。

できる運動からコツコツと

繰り返しになりますが、変形性膝関節症においては安静にしすぎるのも逆効果。痛みが強ければ無理をしてはいけませんが、できる運動から少しずつ着手してみましょう。また、最も大切なのはご自身に合った方法で運動をすることだと考えています。よくあるのは、テレビで「これが効果的」と言っている情報を鵜呑みにしてしまうことです。内容によっては逆効果になったり、他の症状を併発するケースも否定できません。やはり専門家のアドバイスを受け、正しく実践することが大切です。

また、ご紹介した論文の中には、比較的早期に効果が現れたとする報告もありました。ただ、運動療法の開始前に恐怖心が大きかったり痛みが強かったりするようであれば、なかなか効果を感じられないこともあるかもしれません。焦らず長い目で、変形性膝関節症の進行を遅らせるために頑張っていきましょう。その中で当院がお手伝いできることもあると思いますので、何でもご相談ください。全力でサポート致します。

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