変形性膝関節症について

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ヒアルロン酸とステロイド〜変形性膝関節症の注射は何がいいのか?〜

RELEASE:2018-10-18
UPDATE:

変形性膝関節症の治療法の代名詞とも言えるのが、ヒアルロン酸注射。それだけ治療法として一般的にも浸透しているわけですが、一方でステロイド注射を受けているという方もいらっしゃるでしょう。

この2つの膝の注射は、それぞれどんな目的で行われるのか。効果にはどのような違いがあるのか。いつまで受けるものなのか。

変形性膝関節症の注射にまつわる疑問に対し、見解を述べたいと思います。

 

変形性膝関節症は「ヒアルロン酸注射」か「ステロイド注射」か?

変形性膝関節症の治療法の第一選択である保存療法。そのひとつが注射です。炎症を起こし痛みを発している膝関節内に、ヒアルロン酸やステロイドなどの薬剤を注入します。ときには、リドカインという局所麻酔薬を注射することも。ただ、私の場合、リドカインはヒアルロン酸やステロイドに混ぜて使用することが多かったのでここでは割愛し、ヒアルロン酸注射とステロイド注射の違いについて、まずお話したいと思います。

 

それぞれに異なる目的

まず大前提として、変形性膝関節症のほとんどは、対症療法です。現在の医学ではすり減った軟骨が再生させる治療法はありません。つまり、根治させるのではなく、痛みという辛い症状を緩和し、変形性膝関節症の進行を遅らせることが目的となります。これについてはヒアルロン酸注射もステロイド注射も同じ。ただ、何に作用して痛みを和らげるかが異なります。

変形性膝関節症の進行度

まず、ヒアルロン酸注射ですが、この治療の最大の目的は、膝関節の潤滑です。そもそも、関節内の空洞を満たしている滑液(かつえき)にはヒアルロン酸が含まれています。しかし、加齢の影響からヒアルロン酸は減少。軟骨の負担が増え、膝関節の動きも悪くなります。これによって生じる膝の痛みを改善するため、ヒアルロン酸を補充するというわけです。

一方のステロイド注射は、抗炎症と鎮痛作用を持ちます。変形性膝関節症の痛みの原因は、軟骨のすり減りで生じた滑膜(かつまく:関節を包む組織の内側の膜)の炎症。これを抑え、痛みを鎮めるための治療法になります。

 

2つの注射の効果比較

作用は違えど、変形性膝関節症の痛みを緩和するという最終的な目的は同じヒアルロン酸注射とステロイド注射ですが、その効果にはどのようが違いがあるのでしょう。

変形性膝関節症に対する2つの注射後を比較した学術論文によれば、長期的な効果はヒアルロン酸注射、即効性ではステロイド注射に有意性が見られたとのことでした。具体的には、第2週の時点でステロイド注射に有意に出ていた疼痛抑制効果の数値でしたが、第4週にはほぼ同等に。第8週ではヒアルロン酸注射有意の数値に逆転し、第12週、第26週にはそれは広がったと報告されています[1]。

 

国内外で見解が分かれる推奨度

ヒアルロン酸注射は、週1回の投与を3〜5週続け、その後は効果に応じて2〜4週に1回というペースで行われるのが一般的です。日本整形外科学会の変形性膝関節症ガイドラインにおいても、疼痛抑制効果が持続するという特徴は中等度の根拠に基づくとして、87%の推奨強度。変形性膝関節症の標準治療となっています。ただし、変形性関節症国際学会の評価は64%[2]。特にアメリカ整形外科学会では、2013年に改定された診療ガイドラインにおいて、ヒアルロン酸をもう推奨しないとしています。

一方のステロイド注射はどうでしょう。日本整形外科学会の見解では、内服薬が奏功しない中等度〜重度の疼痛、および膝に水がたまるような局所的な炎症が患者の場合に”考慮する”として、推奨強度67%というヒアルロン酸注射より低い評価です。しかし、国際学会の推奨強度は78%[2]であり、海外では評価されていることが伺えます。

このように、変形性膝関節症の代表的な2つの注射においては、国内外で見解が異なります。ただ、ステロイド注射には、軟骨の代謝を抑制する作用による軟骨破壊といった副作用の懸念もあり、複数回の注射は推奨されていません。そういった背景もあり、国内ではステロイド注射を優先する医師は少なく、日本整形外科学会の診療ガイドラインに則った、強い痛みや炎症の場合に用いるケースが多いように見受けます。

私自身も、この2つの注射であればヒアルロン酸を優先。ステロイド注射は除痛目的ではなく、膝由来の痛みということを証明するための診断目的で用いています。ただし、ヒアルロン酸注射による治療も、痛みに対する効果が得られている場合に限るということを付け加えておきましょう。実際、当院でもヒアルロン酸注射を取り扱ってはいますが、受診されるのはすでにヒアルロン酸注射が効かなくなったという方が多いため、優先することはほぼありません。

 

治療法として新たに加わった「第三の注射」

ステロイドと異なり、ヒアルロン酸に大きな副作用は見られません。ただ、リスクがゼロというわけでもありません。そのひとつが、細菌感染による化膿性膝関節炎。確率としては高くありませんが、それでも血流のない関節内への注射という処置では懸念すべきリスクです。そのため、変形性膝関節症が進行し、ヒアルロン酸注射で痛みをコントロールできなくなった方に繰り返すことには否定的です。漫然と続けることで、効果の見極めも難しくなってしまいます。

しかし、ヒアルロン酸注射が効かない場合、現在の保険診療で次に検討するのは、骨切り術や人工関節のような手術です。侵襲のこと、入院のこと、リハビリのことなど、様々な不安から決断できない人は少なくありません。加えて年齢や既往歴から、手術ができない人もいます。その場合、お茶を濁すだけだとしても、漫然とヒアルロン酸注射を続けるしかないのがこれまでの現状でした。

そんな変形性膝関節症の治療の溝を埋めることが期待できる選択肢が、近年新しく加わりました。再生医療を始めとする、自己組織を活用した治療法です。その中でも、当院では膝関節への注射で完結する治療法にこだわって採用。グラフに示されたように、自己脂肪から抽出した培養幹細胞の注射では、投与後1週間後から疼痛抑制作用が確認されています[3]。

培養幹細胞治療が痛み評価スコアに与えた影響

ヒアルロン酸注射やステロイド注射と違って自由診療(保険外診療)での提供となるので、費用のご負担は否めません。しかし、リスクを伴う効かない治療を続けて痛みを我慢することが、患者さまにとって最善なのでしょうか? そうは思えないからこそ、私たちはひとつの選択肢として、血液に含まれる成分を活用するPRP-FD注射や培養幹細胞治療といった新しい治療法を提案しているのです。

[詳細]【自分の脂肪と血液で治療】変形性膝関節症の再生医療の効果と安全性

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