変形性膝関節症について

OA KNEE

変形性膝関節症の手術を検討中の方に知ってほしいこと

RELEASE:2018-10-04
UPDATE:

変形性膝関節症は、進行度や症状によって3つの手術が適応となります。医師から手術を勧められたらどうすべきか。検討段階で不可欠なのが、事前の入念な情報収集と言えるでしょう。

ここでは、変形性膝関節症に適応となる手術方法について解説するほか、もし手術を迷っているならぜひ知っていただきたい、第三の選択肢の存在についてのお話もしています。あなたにあった方法は、本当に手術しかないのでしょうか? 

末期に有効なのは手術のみ

変形性膝関節症が進行すると、大腿骨と脛骨が直接ぶつかり合うようになります。末期にもなると、激痛で夜も眠れないといったケースも多々。膝は満足に動かず、生活に大きな支障が出ます。既に主治医から説明を受けている人もいるかと思いますが、末期になると、人工膝関節置換術という手術を行うのが一般的。つらい疼痛の消失が期待できる優れた手術です。

人工膝関節置換術には2つの手法があり、変形性膝関節症に適応となるのは全置換術、もしくは単顆置換術(たんかちかんじゅつ)です。顆とは、骨の先端にあるコブ状の部位を意味し、膝の内側を内顆、外側を外顆と言います。

人工膝関節全置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)

人工膝関節全置換術

双方の顆が損傷している場合に適応となるのは、膝関節すべてを人工のものと入れ替える全置換術。変形性膝関節症の手術においては、単顆置換術よりも全置換術のほうが多く行われています。

人工膝関節単顆置換術(UKA:Unicompartmental Knee Arthroplasty)

人工膝関節単顆置換術損傷しているのが内顆か外顆のどちらかである場合、単顆置換術という手術が適応となることがあるでしょう。逆側の顆は自身の骨を温存できますが、人工物と骨とのバランスを考える必要があり、手術の難易度は高くなります。また、この手術の適応条件として、主に下記の4つを満たしている必要があります。

  • 膝の4つの靭帯(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯)に機能不全がない
  • 膝の屈伸が可能な状態である
  • 膝関節が、O脚やX脚に大きく変形していない
  • 肥満体型でない

人工関節を「遅らせる」ための手術も存在

変形性膝関節症の症状が悪化し保存療法で対処できない状態になると、手術を検討する目安と言えます。進行期段階でも、関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ:デブリードマン)や、骨切り術といった手術が適応になることがあります。

これらの主な目的としては「将来的に人工関節にするのを遅らせる」こと。変形性膝関節症はひとたび罹患すると、進行を遅らせることはできても、人工膝関節置換術を行って関節を取り換える以外に、根治的な方法がないからです。しかし手術を遅らせるためとはいえ、膝を切開しなければならないのは身体的にも精神的にも負担となってしまいます。

関節鏡視下手術、骨きり術については、本記事の最後にご紹介しています。

人工関節は高い満足度を誇る一方、懸念事項も

変形性膝関節症の進行期で適応となる関節鏡視下手術や骨切り術は、症状を改善させることはできても疾患を完治させることはできず、一時しのぎの側面があると言えます。先述の通り、保存療法で効果が見られなくなった場合の有効な手立ては、人工膝関節置換術のみ。ただこの手術は、96%が「受けてよかった」と術後に回答するほど、良好な結果が期待できる手術です[1]。痛みが”軽減”ではなく”消失”することから、外出に前向きになった、旅行に行けた、といった喜びの声もよく聞きます。

ただ一方で、この手術に懸念事項がないとも言い切れません。

手術を受けたくない人が多いこと

当院にも「手術がどうしても嫌で」という動機を持って来院される患者さんが多いように、身体にメスを入れることは、できれば避けたいもの。入院や術後のリハビリに対する不安も大きいでしょう。本当は手術を受けたくないと思っているのに、他に選択肢がないからと手術を受ける人もいるのは事実です。

平均寿命の延びに伴う再置換率の上昇

人工関節の耐用年数と人間の寿命との関係も、懸念事項です。これは周知の事実かと思いますが、日本人の平均寿命は飛躍的に延びています。100歳以上の人口も急激に増え、2018年9月には6万9785人と、過去最多を記録[2]。2040年代半ばには、日本人全体の平均寿命が90歳を超えるという予測もあります。

また、これまで人工関節の耐用年数は15〜20年と言われてきました。現在では品質が向上し、さらに長期的な使用も可能なケースも多くあります。つまり、初めて手術を受ける年齢が若ければ若いほど、人工関節を除去して新たに入れ直す「再置換」が必要になる可能性が高まるのです。

人工膝関節置換術の初回年齢と再置換の割合

これは海外のデータですが、50代で初めて人工膝関節置換術を受けた人は、3割もの人が再手術を受けていることがわかります[3]。人工関節がその耐用年数を全うしたとしても、人の寿命が延び続けていることを考慮すれば、若年層が安易に人工関節置換術を受けるのはあまり望ましいとは思えません。

人工関節の再置換が問題となる理由

なぜ人工関節の再置換を避けるべきなのか、それは手術が非常に複雑だからです。再置換を行うとなると、骨に強固に装着されている人工関節を除去して、欠損部分へ骨移植したり新たに削ったりする必要があります。そのぶん手術時間もタニケット(駆血:止血法の一種)時間も長くなり、血栓症や空気中の落下細菌による感染症のリスクも増大してしまうのです。

手術ではない”新たな選択肢”が登場

変形性膝関節症と診断され、かつ痛みを有する患者数は約820万人とされています。また、日本人工関節学会の統計によると、人工膝関節置換術の執刀件数は国内で88000件[4]。つまり、変形性膝関節症患者の1%程度がこの手術を受けているということになります。換言すると、99%の人は手術以外の方法を選択している計算。そうした人たちについても、将来的に大手術が避けられなくなる可能性がないとは言い切れません。漫然とヒアルロン酸注射を続けても、進行期に手術を受けても、末期まで進行してしまう可能性はあります。

これまでなら効果のない保存療法でも続け、いずれは手術を受けるという選択肢しかありませんでしたが、近年、新たな選択肢が登場しました。それが、再生医療。これによって、保存療法の効果が芳しくない場合でも、次の選択肢を見出すことができるようになったのです。ひざを切開しない治療法であることから、手術を希望されない患者さまにも喜ばれますし、この治療法に期待できることを当院は知っています。詳しくは下記の関連記事にて、お伝えしています。

[詳細]【自分の脂肪と血液で治療】変形性膝関節症の再生医療の効果と安全性

【参考】人工関節を「遅らせる」目的の手術とは

記事中で言及した、人工関節を遅らせる目的で進行期に多く行われる手術は次の2つです。

関節鏡視下手術(デブリドマン)

関節鏡視下手術(デブリドマン)変形性膝関節症が進行する過程では、膝関節の軟骨が毛羽立ったり、損傷して剥がれ落ちたりします。そうした組織が膝関節を覆っている滑膜を刺激すると炎症が起き、その炎症が痛みを引き起こすのです。損傷した軟骨の欠片などを除去することで症状の改善が見込める場合、関節鏡視下手術が適応となります。

この手術は、膝の周囲に数カ所、5〜7ミリ程度の穴を開け、関節鏡(内視鏡)と手術器具を挿入。関節内の映像を見ながら手術を行います。前十字靭帯(ACL)や半月板の損傷など、外傷の治療にも広く用いられますが、変形性膝関節症を完治させる手術ではなく、あくまで痛みなどに対して行うもの。疾患の進行に伴って効果は薄くなり、末期ではほとんど効果を期待できません。早い段階に行うことで関節の変形を多少遅らせ、最終的に人工関節となるまでの時間を稼ぐ、といった意味合いが強いでしょう。

さらに、この手術にはもう一つ、関節内の軟骨の状態を確認するという目的もあります。他の手術を行うかどうかを評価する上で、軟骨の状態を確認することがとても大切だからです。

骨切り術

関節の変形が進行してしまった方に適応となります。これは名の通り、膝の周囲の骨を切って、膝の関節で骨が向き合う角度を調整する手術。荷重のバランスを整え、痛みの緩和を図る目的があります。人工骨や固定器具の性能が良くなっていることから、良好な結果が期待できるでしょう。自身の膝関節を全て温存できるため、重労働、スポーツなどが継続可能。場合によっては人工関節になるのを回避し、一生を遂げられるケースもあります。実際に、人工膝関節置換術の適応となる方が活動性の高い職業に就いていたため、人工関節を避けて骨切り術を行ったケースがありました。現在でも経過は順調と聞いています。このように、場合によっては人工関節となるのを遅らせたり、回避したりすることが可能です。

[詳細]膝の骨切り術とは〜自分の関節を残すための選択〜

注意点としては、切るのが主に脛骨、つまり関節外であることです。関節の内部で損傷した骨や軟骨の状態を直接的に改善するのではなく、重心のかかる位置を調節するのが目的。また、骨を切る必要があるため、骨粗しょう症のように骨が脆弱化する病気を患っている場合は適応が難しくなります。
骨切り術は、すねの脛骨の上部を切る高位脛骨骨切り術が行われることが多く、矯正する角度によってオープン・ウェッジ法、クローズド・ウェッジ法という2つの手法が使い分けられます。

オープン・ウェッジ法(Opening Wedge)

高位脛骨骨切り術(オープン・ウェッジ法)脛骨の内側を切開して人工骨を入れ、金属などで固定。膝関節にかかる負担を軽減し、痛みの緩和を図る手術です。

クローズド・ウェッジ法(Closing Wedge)

高位脛骨骨切り術(クローズド・ウェッジ法)脛骨と腓骨を切開し、その断面を合わせてプレートで固定するのがこの手法。矯正する角度が大きい場合に適応されますが、腓骨という脚の外側にある骨の切開も必要となります。

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