変形性膝関節症について

OA KNEE

PRP療法が膝の痛みに果たす役割とは?

RELEASE:2018-11-05
UPDATE:

まずは鎮痛薬の服用を始めとする保存療法、効果が見られなければ外科手術。従来、膝の痛みの治療はこうでした。しかし、これを読んでいる方は、そのどちらでもない、第3の治療法に期待しているのではないかと思います。

そのひとつとして注目を浴びているのが、PRP療法。ヨーロッパ・アメリカなどではスポーツ選手から一般の人まで広く浸透している治療法で、メジャーリーグで活躍中の大谷翔平選手や田中将大選手が受けたことをご存知の方も多いでしょう。その詳細な方法やメカニズム、副作用などについて、私が過去に手掛けたPRP療法の症例も交えつつお話しします。

PRP療法とは

PRP治療とはPRP療法は再生医療の一つで、自身の血液に含まれる血小板を患部に注射する治療法です。血小板に止血作用があることは知られていますが、実はそれだけでなく、傷が治癒するまでの過程に関与しています。この働きに着目して誕生したのが、血小板を豊富に含む多血小板血漿(たけしょうばんけっしょう:PRP)を用いた治療なのです。
最近生み出されたわけではなく、臨床で応用され始めたのは1970年代からというPRP療法。現在では、日本でも導入する医療施設が多くなり、美容医療、歯科や皮膚科での治療といったさまざまな分野で応用されています。そして、整形外科もそのうちのひとつ。膝の疾患では変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯損傷といった、関節内の疾患に効果を発揮するほか、ジャンパー膝やランナー膝にも適応となります。

痛みの緩和に作用するメカニズム

PRPが作用するメカニズムPRP療法が、このような膝の疾患を治療できるのはなぜなのでしょうか? カギとなるのが、血小板から放出される成長因子。例えば皮膚を切って出血しても、いずれは血が止まり、皮膚もきれいに修復されます。これこそ、血小板と成長因子のおかげです。傷の修復、炎症の抑制といった役割を持つさまざまな成長因子の働きで、患部の状態が整っていくのです。
PRPに含まれる血小板の数は、通常の血液の3〜5倍というデータも[1]。血小板を多量に含むということは、成長因子も豊富ということですから、そのぶん修復能力や鎮痛効果も格段に高いと考えられます。実際に、変形性膝関節症の方を対象にPRP療法を行ったところ、ヒアルロン酸注射と比較して高い効果を得られたとする論文も発表されました[2]。

【PRPに含まれる成長因子の例】
– TGF-β……軟骨細胞や骨芽細胞の増加
– bFGF/EGF……損傷した組織や筋細胞の修復・調整
– CTGF……軟骨の修復や線維化
– VEGF……血管の緊張や炎症を調整する細胞の増加
– PDGFa-b……組織修復に関わる細胞の分裂を促進

実際のPRP療法と考察

PRP治療の効果や回数を考察血液の作用に着目した治療法のため、施術に際しては採血が必要です。外科手術のように、膝を切開する必要はありません。病院によっても異なりますが、採血量は30ml程度が目安となるでしょう。血液を遠心分離し得られるPRPは10%ほど。それを注射器で患部へ注入します。所要時間は1時間程度で、入院も不要です。
膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)の治療が難渋している患者さまにPRP療法を行った症例では、20mlの血液から生成した約2mlのPRPを注射し、2週間ほどで膝の痛みが軽減。そして約1ヶ月のフォローアップ期間中に、一定レベルのスポーツに復帰されました。これまでPRP療法を行ってきた中では、これと同程度の期間で効果を実感できたケースが多いという印象があります。ただし疾患の重症度にもよりますので、あくまで指標とお考えください。
また、膝蓋靭帯炎の患者さまは一度の注射で効果を実感されましたが、慢性期になれば回数を要したり、効果が薄くなってしまうことが考えられます。どのような疾患でもそうですが、急性期の方が少ない回数で済むことが多いでしょう。

副作用が起きる可能性は?

PRP治療に副作用はほとんどない 一般的に、PRPは自身の血液からなる注入剤のため、治療に際して副作用が出にくいのが特長です。膝の痛みに行われる注射として、ヒアルロン酸注射やステロイド注射といったものもあり、世間に広く浸透しています。ヒアルロン酸注射は副作用こそ少ないですが、効果の持続性が乏しいというのが難点。また、ステロイド注射には軟骨の代謝抑制による軟骨破壊といった副作用があり、懸念点がないとは言い切れません。
一方、先にあげたPRP療法の症例では、注射後の反応痛こそ強く出ましたが、副作用と呼べるほどの重篤な症状は出現しませんでした。反応痛とは、細胞分裂を活性化させる成長因子の働きで起きる炎症によるもの。注射した部位に成長因子が浸透し、作用している証拠でもあります。痛みの続く期間としては数日〜1週間程度が多いでしょう。注射後の反応による炎症が落ち着いてくると、反応痛も軽減するものと考えられます。
ただ、反応痛の有無や強弱は、注入部位によっても違ってくるように感じています。このケースでは、関節外の靭帯への注入でした。こういった場合、変形性膝関節症の治療で関節内に注入するよりも、治療後の痛みを誘発しやすい傾向があります。これは、関節という広域部分よりも、靭帯や腱のほうが組織の密度が高いためと考えられます。

成長因子を高濃度に加工した「PRP-FD」も

当院が提供するPRP-FD注射当院でも以前はPRP療法を行っていましたが、現在はその一種である「PRP-FD注射」を、変形性膝関節症の治療法として採用しています。血液からPRPを生成するところまでは同じ工程ですが、そこから血小板由来の成長因子のみを高濃度に加工したものです。
厳密にはPRP療法とは異なりますが、成長因子はより高濃度。当院ではこれまでに2000例以上を行ってきましたが、そのデータを見ても、期待できる効果はPRP療法より高いと考えています。また、加工の段階で無細胞化しているため、注射後の反応痛も格段に少ないようです。
当院では、PRP-FD注射とPRP療法の効果に関するデータをまとめ、2019年3月の再生医療学会で発表しました。その内容を別記事にしていますので、参考にしてみてください。
[参考]変形性膝関節症に対するPRP治療とPRP-FD注射の効果比較

痛みを緩和し生活の質を高めることも目的

比較的、早い段階で痛みの緩和が期待できるPRP療法は、効果の持続性も優れています。痛みのある状態が続くと恐怖感が蓄積され「歩いてはいけない」「運動しないでおこう」とネガティブになってしまうかもしれません。しかし、過度の安静は筋力の低下を招きます。特に、膝への負担を和らげる太ももやふくらはぎの筋力低下は、膝の痛みを悪化させる大きな要因になります。そうした状態から抜け出すのも、PRP療法の隠れた目的と言えるかもしれません。
恐怖感を拭い去ることで治療に前向きになれれば、より痛みに負けない膝を作っていくことができます。つまり、薬以上に身体が元来持っている組織・機能こそが鎮痛剤になり得るということ。そんな力を引き出すための一助としてPRP療法が有効であると、私たちは考えています。

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