変形性膝関節症について

OA KNEE

変形性膝関節症のサプリメント、効果についての世界的な見解は?

RELEASE:2018-12-28
UPDATE:

「膝の関節痛にグルコサミンやコンドロイチン」このフレーズ、よく聞きますよね。通販番組やショッピングサイト、薬局などには、こうしたサプリメント商品がずらり。それだけ需要が高いことが伺い知れます。毎食後に欠かさず飲み続けている方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、膝のトラブルの中でも特に多い変形性膝関節症に対するサプリメントの効果にフォーカス。果たして効くのか、効かないのか。市場を大きくゆるがす論文が存在することをご存知でしょうか?

軟骨への効果を謳うサプリメント

膝をはじめ、関節に悩みを抱える人をターゲットに売り出されているものとしては、グルコサミンやコンドロイチンなどが代表的。これらは元来、ヒトの軟骨にも含まれる成分ですが、加齢に伴い減っていくほか、変形性膝関節症が進行している人の膝軟骨では特に減少が著しいことも分かっています[1]。そうして膝を動かしにくくなったり、軟骨がもろくなってしまったりするのです。サプリメントは、このような関節の悩みを持つ人に対し「不足した成分を補うことで、軟骨が保護される」という訴求を行っているのだと考えられます。さて、ここで気になるのが、サプリメントに効果があるのかどうか、ということでしょう。

加齢に伴うN-アセチルグルコサミン量の変化 加齢に伴うコンドロイチン硫酸A型の減少

効果の有無は?

グルコサミンやコンドロイチンの効果についての研究は数多ありますが、中でもスイスのベルン大学による報告が有名です。これは、グルコサミン、コンドロイチンをそれぞれ単独で服用したケースと、双方を同時に服用したケースについて、効果を測定したというもの。いずれのケースにおいても、膝の痛みが有意に改善したり、*関節裂隙(れつげき)の狭小化が予防されたりといった効果は確認されなかったそう[2]。これらの成分が含まれるサプリメントにも、そうした効果が期待できるとは考えにくいでしょう。

*関節裂隙とは、膝関節を形成する大腿骨と脛骨の隙間のことです。軟骨のすり減りが悪化すると、関節の隙間は狭くなっていきます。関節裂隙の狭小化とはつまり、変形性膝関節症の進行を意味します。

中には「軟骨が再生する」と謳うサプリメント商品も存在します。グルコサミンやコンドロイチンが軟骨の構成成分であることは事実ですが、サプリメントの経口摂取によって軟骨の再生や保護を促す作用が出現することは確認されていません。というのも、軟骨には血流が乏しく、摂取した栄養素が軟骨に届くとは考えにくいためです。さらには、現在の医学において、すり減った軟骨を再生させることは困難とされていることが究極の理由として挙げられます。

国際変形性関節症学会と日本整形外科学会も、サプリメントの効果については否定的な立場を取っています。

  • 「症候性の膝OA患者では,グルコサミンやコンドロイチン硫酸が軟骨保護作用を示す場合がある」
  • 「グルコサミンやコンドロイチン硫酸の投与は膝OA患者の症状を緩和させる場合がある。6ヵ月以内に効果がみられなければ投与を中止する」

上記は、変形性膝関節症の治療効果を示すガイドラインにおける記述です[3]。これについて、両学会は揃って「サプリメントは推奨しない」あるいは「エビデンス(根拠)がない」という見解を示しました。世界的に見ても、サプリメントに明確な効果は認められていないと言えるでしょう。

効果があるように感じるのはなぜか

通販サイトなどの口コミ欄には「膝の痛みが消えた」「膝が楽に動くようになった」といった声も多く見かけます。サプリメントは効果がないとお伝えしましたが、一体どういうことなのでしょうか?

その答えは「プラセボ効果(プラシーボ効果)」です。プラセボとは、本来は効果のない成分で作られた薬という意味。つまりは、偽物の薬(偽薬)です。しかし効果があると信じて飲むことで、本当に効果を感じることがあり、多くは心理的作用によるものと考えられています。

このことが明らかになったのが、2017年に世界五大医学雑誌の一つであるイギリス医師会雑誌に掲載された、グルコサミンサプリメントの効果についての研究報告です[4]。変形性膝関節症の患者を対象に、グルコサミンの服用開始から3ヶ月、2年のスパンで効果を測定したというもの。結果として、膝の痛みや機能の改善効果はほとんどがプラセボ効果だったと言います。また、研究に用いられたデータの中には、プラセボの方が効果が高かったとするものもありました。

興味深いのが、効果があると一度思い込めば、偽物であると分かっても効果が持続することです[5]。背中の痛みに対する治療として偽薬を投与したところ、一定の効果が見られ、それが偽薬だったと伝えても、その効果は持続したそう。膝にも同様のことが起きる可能性は十分にあります。

サプリメントだけに頼らず適切な治療を

この記事でフォーカスした変形性膝関節症は、軟骨のすり減りによって進行する病気です。加齢に伴って軟骨がすり減っていくのは周知の事実ですから、ある程度は膝の痛みが出ても仕方がないというのも共通認識であると考えられます。当クリニックが実施したアンケート調査では、膝に痛みがあるのに病院を受診していない71人のうち、約2割が「加齢のせいなので仕方ないから」と回答しました。さらに、同71人のうち8割以上が「病院に行くほどの症状と思わないから」と回答。一見すると無関連にも思えるこれらの回答ですが「加齢のせいなので、多少は痛みが出ても仕方ない」という考えがあるのかもしれません。そんな状況において「軟骨に作用する」などと言われれば、思わずサプリメントに手を伸ばしてしまう人が増えるのも頷けます。

運動療法による好循環現在すでにサプリメントを服用している方は、何らかの効果を感じられているのであれば、服用を継続しても問題ないでしょう。私も診療の中で患者さまから質問があった場合、そのようにアドバイスをしています。例えプラセボ効果であったとしても、痛みが緩和されている安心感は大切だからです。詳しくは変形性膝関節症の治療法についての記事でお話ししていますが、治療の中心となるのは運動療法。痛みが緩和されて身体を動かしやすくなり、運動に前向きになる好循環を作ることができればベストです。

しかし本来は、サプリメントを服用すること自体に、痛みの緩和作用も、変形性膝関節症の進行を止める作用もありません。効果を実感できないのであれば、一度ストップしてみても良いかと思います。サプリメントだけに頼って安心してしまうのは少々危険。あくまで心理的な補助としての使用をおすすめします。医師の指導を基本として、適切な治療を進めていただくのが最善です。

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