グルコサミンやコンドロイチン、サプリメントは膝の痛みに効果あるのか?

公開日:2021.11.16
更新日:

「膝の痛みにグルコサミンやコンドロイチン」。CMなどでよく耳にするフレーズです。通販番組やショッピングサイト、薬局などには、こうしたサプリメント商品が多く展開されています。「膝の痛みは気になるが通院するのは面倒…」「人工手術などの手術は避けたい…」そんな思いから毎日欠かさず飲み続けている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今や薬局やネットで手軽に購入できるサプリメントですが、気になるのは実際の効果や安全性。この記事では、そんなサプリメントについて解説していきます。

情報提供医師

尾辻 正樹 医師

尾辻 正樹 医師(横浜ひざ関節症クリニック 院長)

日本整形外科学会認定 専門医

サプリメントで使用される成分【グルコサミン・コンドロイチン】

関節痛のサプリメントとして人気のグルコサミンとコンドロイチン。どちらも人の細胞や軟骨に存在し、関節の動きを助ける成分です。

グルコサミンとコンドロイチンのはたらき

グルコサミンはアミノ糖の一種で、人体で生成されるものです。
生成後は軟骨や皮膚、爪、靭帯などをはじめ、体の中のさまざまな臓器に分布し、組織を柔軟にしたり、水分を保つはたらきがあり、クッションのようにさまざまな臓器を保護する働きを持っています。
膝の場合、軟骨を保護し、関節の動きを滑らかにしてくれます。
一方、コンドロイチンも人体で生成されるもので、軟骨の主成分の一つです。グルコサミンと同じく、関節のクッションとなるはたらきがあります。

膝の痛みとグルコサミン・コンドロイチンの関係

体内のグルコサミンとコンドロイチンは年齢とともに減少していきます。

また、変形性膝関節症が進行している人の膝軟骨では特に減少が著しいことが分かっています[1]

加齢によってグルコサミンとコンドロイチンが減少することで、関節のクッションの役割が衰えていき、膝が動かしにくくなったり、さらに進行すると軟骨がもろくなり、痛みが生じるのです。

加齢に伴うN-アセチルグルコサミン・コンドロイチン硫酸A型の量の変化

グルコサミン・コンドロイチンのサプリは効果がある?

膝に悩みを抱える人をターゲットに売り出されている、グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメント。
サプリメントを飲むことで、体内で作られなくなったグルコサミンやコンドロイチンを補うことができ、膝の痛み緩和につながるとされていますが、はたしてこれらを口からサプリメントとして摂取することで本当に効果は期待できるのでしょうか?

サプリメントで痛みは改善するのか?

グルコサミンやコンドロイチンを含むサプリメントのCMや通販サイトでは、「膝の痛みが消えた」「膝が楽に動くようになった」といった口コミをよく見かけます。当院へ来院された患者様のなかにも、現在サプリメントを飲んでいて効果を感じている、という方がいらっしゃいました。

しかし実際はグルコサミンとコンドロイチンが膝関節へ及ぼす影響はない、という見解が有力です[2]

グルコサミンまたはコンドロイチンを経口摂取することで関節の構造に利益的な効果があるかどうかの研究結果の報告からもそれが示されています。その内容は、コンドロイチンのみ・グルコサミンのみ・両者併用のケースを、痛みの改善度や関節のすき間の変化などで比較するというものでした。結果、最大の痛みを10としてサプリ摂取後の数値の変化を調べる痛みスケールでは、変化はどれも微差で信頼に値する数値には達しませんでした。関節のすき間の広さにおいても同じく、改善効果が信頼できる数値は見られませんでした。つまり関節のグルコサミンとコンドロイチン、その両者を併用して投与したグループでも、膝の痛みや関節内の改善は見られなかったわけです[2]

痛みスケールの変化 関節のすき間の変化
グルコサミンのみ -0.4cm 微小
コンドロイチンのみ -0.3cm 微小
併用 -0.5cm 微小

また、変形性膝関節症の方1583人をコンドロイチンのみ、グルコサミンのみ、両者併用、鎮痛薬、上記のいずれも投与しない5グループに分け、それぞれ半年間投与を続けたという研究においても、サプリメントでの膝の痛みの改善は見られなかったと報告されています[3]

グルコサミンもコンドロイチンもサプリでは効かない理由

グルコサミンもコンドロイチンも、膝関節の健康には欠かせない成分です。だからこそ、効くと言われれば信じて摂取するのもわかります。ただ、サプリメントは経口摂取なので、胃や腸で分解されてしまいます。もし運良く有効成分が血中に取り込まれたとしても、軟骨は血流がとても乏しい組織なので、成分が辿り着くのは難しいのではないかと考えています。そのため、サプリメントで痛みの改善、ましてや軟骨の再生とった効果が期待できるとは思えないのです。

サプリメントで痛みが改善したと感じるのはなぜか?

しかし一方で、サプリメントで膝の痛みが改善したという声があるのも事実です。その理由は、「プラセボ効果(プラシーボ効果)」だと考えられています。
プラセボとは、本来は効果のない成分で作られた薬という意味で、偽物の薬(偽薬)です。しかし効果があると信じて飲むことで、本当に効果を感じることがあり、多くは心理的作用によるものと考えられています。
このことは、2017年に世界五大医学雑誌の一つであるイギリス医師会雑誌に掲載された、グルコサミンサプリメントの効果についての研究報告で明らかになりました。研究内容は、変形性膝関節症の患者を対象に、グルコサミンの服用開始から3ヶ月、2年のスパンで効果を測定したというものです。この報告では、膝の痛みや機能の改善効果はほとんどがプラセボ効果だったと結論づけています。

また、研究に用いられたデータの中には、プラセボの方が効果が高かったとするものもありました[4]

興味深いのは、効果があると一度思い込めば、偽物であると分かったとしても効果が持続することです。

背中の痛みに対する治療として偽薬を投与したところ、一定の効果が見られ、それが偽薬だったと伝えても、その効果は持続したという研究結果も出ています[5]
国内のサプリメントでも同様のことが起きる可能性は十分にあると言えるでしょう。

サプリメントには危険が伴う場合もある

また、研究により、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントは、他の薬物と併用すると相互作用を起こす危険性があるとされています。

一例として抗凝固剤(血液希釈剤)薬であるワルファリンと併用すると血液の凝固作用を調べる検査値であるPT-INR値が上昇し、出血やすくなる等の相互作用を起こすおそれがあることがわかっています[6]

ワルファリンを服用、または血糖値に問題がある人で、グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントの摂取を考えている場合、または摂取している場合は、かかりつけの医師に副作用の可能性について相談することをおすすめします。

膝の状態に合わせた適切な治療を選択しましょう

サプリメント以外にも変形性膝関節症などの膝痛や関節痛に効果的な治療法は存在します。これらはサプリメントとは異なり、きちんと科学的根拠のある治療法です。

保存療法

保存療法のイメージ

手術を行わない方法で、主にヒアルロン酸注射などがあげられます。
膝の痛みを和らげる治療法として広く提供されているヒアルロン酸注射。ひざ関節の潤滑油の役割を果たすヒアルロン酸を補充することで、軟骨の保護、痛みや炎症の抑制に繋がります。また、治療時間の短さもメリットの一つです。

人工関節治療

人工関節治療のイメージ

その名の通り、関節を器械である人工的な関節に置き換える治療方法です。損傷した関節をそのまま置き換えるので痛みの根本原因を改善することができ、速やかに効果を実感できます。一方で、大掛かりな手術となる為、3~6週間の入院が必要であったり、術後のリハビリテーションが必要となります。また、人工関節の劣化具合によっては再手術を要する場合もあります。

再生医療

再生医療のイメージ

薬剤や人工関節などと言った化合物や機器に頼らず、体が本来持っている自然治癒能力を高めて治療を目指す医療を再生医療といいます。
ご自身の検体を使用するため、拒絶反応やアレルギー反応のリスクが低く、ヒアルロン酸などの注射治療よりも長期間の治療効果が期待できるといわれています。
自己血液の修復作用で自然治癒機能を高め改善を目指すPRP-FD注射や、幹細胞を培養して注射する培養幹細胞治療などがあげられます。
手術をせずに組織そのものの再生が期待できる再生医療、万能の様ではありますが、一方で自由診療なので全額自己負担になってしまうというデメリットもあります。

現在サプリメントを服用中で、何らかの効果を感じられているのであればそのまま服用を継続しても問題はないでしょう。しかし、効果を実感できていないのであれば、一度服用を止めてみても良いかと思います。サプリメントはあくまで心理的な補助として使用し、膝の痛みにお悩みの方はまず一度膝の診断を受け、膝の状態に合わせた適切な治療を進めていただくことが大切です。
当院は膝の痛みの原因を特定し、医師の診断を受けられるMRIひざ即日診断をご用意しております。詳しくは以下のリンクをご覧ください。
MRIひざ即日診断

当院では膝の痛みに対し、再生医療を中心とした治療をご提供しています。
診察をご希望の方は、はじめてのご来院予約よりお気軽にお問い合わせください。

はじめてのご来院

コラムのポイント

  • グルコサミンやコンドロイチンが膝関節に影響を及ぼすことはない
  • サプリメントには危険が伴う場合もある
  • 膝痛や関節痛に効果的な治療法を選択することが大切

よくある質問

プロテオグリカンという成分は膝痛に効果があるのでしょうか?

グルコサミンやコンドロイチンと同様に、膝関節へ及ぼす影響はないという見解が有力です。

プロテオグリカンとは
関節軟骨の構成成分の一つで、高い保水力のある成分です。軟骨に負担が加わった時は、プロテオグリカンが軟骨に潤いを与え、衝撃などから守ります。他に抗炎症作用や軟骨細胞を修復する機能もあるため、膝にとって重要な成分です。プロテオグリカンは、膝軟骨のクッション性を保つために欠かせない成分ですが、年齢とともに減少していきます。

プロテオグリカンを含んだサプリメントは膝痛に効くのか?
体内で作られなくなったプロテオグリカンを補う方法として挙げられるのが、サプリメントの服用です。しかし、プロテオグリカンはグルコサミンやコンドロイチンと同様に、サプリメントとして飲んでも膝関節に効果はない、と言われています。
プロテオグリカンを含んだサプリメントで膝痛が楽になった、という方もいらっしゃいますが、それは「プラセボ効果(プラシーボ効果)」だと考えられます。プラセボ効果も立派な効果ですが、膝痛の根本的な解決にはなっていません。膝痛の多くの原因を占める変形性膝関節症は進行性の疾患です。悪化する前に、一度クリニックで膝の状態を診察していただくことをおすすめします。

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膝の痛みに効くといわれる市販薬にはどんな効果ものがありますか。

関節痛や神経痛を和らげる成分の入った内服薬のほか鎮痛の成分が入った湿布薬があります。
また、漢方薬も変形性膝関節症のような痛みを伴う整形外科疾患に効果を発揮します。防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)です。成分中の主薬となる「防已」には抗炎症作用があり、西洋薬の鎮痛剤と同様に、炎症を改善することで効果が期待できます。こちらは、ドラッグストア等で購入することが可能です。
ただし、痛み止めの内服薬や湿布などの外用薬を使用し、効果が感じられない場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
薬の使用以外にもストレッチや筋トレ、膝サポーターなども膝の痛みの緩和に効果を発揮するため、おすすめです。

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