変形性膝関節症について

OA KNEE

変形性膝関節症のリハビリは「全身の安定性」を高める意識で

RELEASE:2018-10-29
UPDATE:
「リハビリ」と一口に言っても、変形性膝関節症に関係するリハビリは2種類あります。一つは保存療法として行うもので、もう一つは手術を行った後に行うもの。後者ならば、人工膝関節置換術という手術後が特に重要です。
大切だと聞いたことはあるけれど、その目的がよくわからないという人も多いでしょう。ここでは、変形性膝関節症の保存療法と手術後、それぞれのケースで行うリハビリの流れや目的、意識すべき「全身の安定性」について、様々な論文報告や当院の見解も交え、詳しく解説します。

①保存療法としてのリハビリ

変形性膝関節症の保存療法としてのリハビリ変形性膝関節症の保存療法として、リハビリ(運動)を行うことがあります。これは病気の進行を予防するためのもの。初期や進行期の方であれば、リハビリとして継続的な運動を行うことで症状が改善に向かうことは少なくありません。運動には鎮痛薬と同等レベルの効果があったとする研究結果も、オーストラリアの大学から発表されています[1]。痛みがあっても行えるリハビリとしては、大腿四頭筋のセッティングというトレーニングが代表的で、多くの場面で用いられます。ただし、個人の症状によっては適さないものもあるため、まずは医師や理学療法士と相談し、内容や頻度を決定するのが望ましいでしょう。病院やリハビリ施設でトレーニングの方法をお伝えし、それを家でも実践するという形が多いです。

痛みの解消・予防

膝関節にかかる負荷を吸収してくれるのが、膝周りの筋肉。特に太ももの大腿四頭筋の訓練が重要です。大腿四頭筋を中心とした膝周りの筋肉を鍛えることで、痛みの解消、変形性膝関節症の悪化予防に期待できます。

膝関節の安定

歩行時のぐらつきや歩き出しの痛みは、膝の不安定性が原因となっている可能性があります。骨盤や他の部位の歪みが関係していることも考えられ、この状態が続くとO脚やX脚が進行してしまう恐れも。膝周辺の筋肉を鍛えたりほぐしたりして、膝を安定させることが大切です。

拘縮を防ぎ、膝の可動域制限を解消

変形性膝関節症で痛みが出ると、動かずじっとしていることが増え、膝周辺の筋肉が硬くなる拘縮(こうしゅく)が起きやすくなります。そうして徐々に膝の可動域が狭くなると、膝が満足に曲がらなくなって日常生活に支障が出る恐れも。リハビリによって拘縮を防ぎ、膝の可動域を正常に保つことが必要です。

 

②人工膝関節置換術後のリハビリ

人工膝関節置換術人工膝関節置換術は文字通り、膝の関節をインプラント(人工物)と入れ換える手術。変形性膝関節症が末期まで進行した場合、適応となります。損傷した組織を取り除くため、痛みの消失が期待できる手術です。

手術直後は、早い段階でリハビリを開始します。じっとしていると血管が詰まる血栓症を発症する可能性があるためです。リハビリの内容としては、まず歩けるようになるための運動・トレーニングがメイン。可動域制限をなくす運動から歩行訓練という流れで進めていきます。

あくまで一例ですが、手術の翌日にはベッドの上でできる足首回しなど、術後3日〜1週間で杖を使ったり平行棒に捕まったりしながらの歩行を行います。2週間ほどで階段昇降などの本格的な日常動作へと移行し、3〜4週間程度で順調に進んでいると理学療法士が判断した場合、退院できることも多いでしょう。退院後は手術による傷口やレントゲンの確認のため通院が必要で、同時にリハビリを行うケースもあります。

人工関節への負担を軽減

痛みがなくなったとはいえ、膝に入っているのは人工物。強い衝撃を与えると弛みが生じたり、破損したりしてしまう可能性はあります。実際、人工関節の再手術が必要となる原因として最も多いのがインプラントの弛みである、というデータも出ています[2]。膝への衝撃を吸収し、長く人工関節を使っていくことができるように、退院後も膝周りの筋肉は継続して鍛えておく必要があるのです。

拘縮を防ぎ、可動域制限を解消

人工膝関節置換術を受けた後にも、膝周辺の筋肉に拘縮が起こりやすくなります。身体を動かさないことによる筋肉の柔軟性低下や加齢が主な原因。可動域の改善具合は、術前にどれだけ可動域制限があったかにもよりますが、改善された可動域を可能な限り大きく保つため、手術の後にもリハビリは必須です。

正しい身体の使い方をマスターする

手術後、膝の状態は術前と大きく変わっています。膝に痛みがあった術前では、痛みをかばって生活していたはず。そのとき使っていなかった筋肉も使うことができるよう、身体の使い方を変えていかなければならない場合も多いでしょう。

膝だけでなく身体全体の安定性向上が理想

変形性膝関節症と支持基底面保存療法としてのリハビリと手術後のリハビリ、いずれも効果を最大限に発揮させるためには、膝周りの筋肉だけでなく、身体全体のバランスを考えるのが望ましいでしょう。ポイントとなるのが、支持基底面(しじきていめん)や体幹の考え方です。支持基底面とは、身体を支えるため地面と接している部分を結んだ範囲のこと。二足で直立している場合は、画像のように足の周囲を結んだ面がそれにあたります。広ければ広いほど身体の安定感は高まり、支持基底面に重心が近いほど、身体は安定します。

広島大学が行った研究[3][4]で、変形性膝関節症の患者は椅子から立ち上がる動作(お尻と足で形成された広い支持基底面から、足のみの狭い支持基底面への移行)において、健全者よりも上半身の前傾姿勢を強める傾向があると明らかになりました。これは、支持基底面に重心を近づけることで、お尻が地面を離れたあとの身体の安定性を確保しようとしているということ。立ち上がりでの身体の安定性は通常、膝関節周囲の筋肉がサポートすることで成り立っています。しかし、このように身体の動きで安定性を補完するということは、負荷をすばやく吸収する筋肉の制御能力が得られていない可能性があるということ。特に、股関節周囲の筋肉の能力低下がわかったと報告しています。結果として、変形性膝関節症の患者の立ち上がり動作は、膝関節にかかる負荷を軽減させることができていない、と結論づけられています。

膝関節にかかる負担が増えると、変形性膝関節症の悪化にも繋がります。ですから、それを防ぐためには膝周辺の筋肉だけでなく、股関節や骨盤、胸部といった他の部位も含め、体幹の安定性を高める必要があるのです。実際に前述の広島大学の研究では、では、こうしたことを意識することで、変形性膝関節症の悪化予防に寄与すると結論づけられています。

また、人工膝関節置換術を受けた後のリハビリで、腹斜筋群や股関節周囲の筋力をつけるトレーニングによって支持基底面の拡大や体幹の安定を図ったところ、効率的な歩行、姿勢バランスを獲得できたとする論文も[5]。やはり、膝だけでなく身体の安定性を高めることは、変形性膝関節症の悪化予防、人工膝関節置換術を受けた後、いずれのフェーズのリハビリにおいても有用であると言えるでしょう。

当院でのリハビリも体幹を意識

ひざ関節症クリニックのリハビリも体幹を重視変形性膝関節症の進行度や手術の有無に関係なくリハビリの重要性は高いというのが、私はもちろん、当院全体の見解です。当院が主に提供しているのは、培養幹細胞治療やPRP-FD注射といった再生医療を始めとする先進的な治療。膝を切開しない、手術以外の方法のため、大きく分類すると保存療法の一種ということになります。

当院では、膝に負担をかけないことを前提とした上で、体幹を意識するトレーニングも取り入れています。膝周辺でよく行うのが大腿四頭筋、下腿三頭筋、ハムストリングス、内転筋群などの訓練ですが、より身体の安定性を高めるため、腹横筋(腰痛コルセットの役割を果たす筋肉)や中殿筋(股関節外転筋)といった、やや膝から離れた筋肉へのアプローチも大切だと考えるからです。こうしたリハビリを継続して行っている方のほうが、やはり膝の痛みの改善度は高いという肌感があります。

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