変形性膝関節症について

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変形性膝関節症とは

変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう・へんけいせいひざかんせつしょう)とは、膝軟骨のすり減りの影響から関節内に炎症が起きて痛みが生じるという、膝の代表的な疾患です。50〜60代での発症が多く、変形性膝関節症による膝の痛みを抱えている人は国内だけでも推定1,000万人、痛みを自覚していなくてもレントゲン検査の所見上での患者数を含めると、3,000万人とも言われています[1]。

変形性膝関節症の年齢別罹患率

例えば、膝が痛くて階段の上り下りがつらい、しゃがんだり正座したりの動作が難しくなってきた、立ち上がろうとすると膝がこわばる(固まる)といった症状が、変形性膝関節症の初期には多く見られます。心当たりはあるものの、老化現象だから仕方ないとお思いの方も少なくないでしょう。ただ、変形性膝関節症は、放置するとどんどん進行してしまいます。関節表面を覆う軟骨だけでなく、半月板やさらには骨自体にも損傷が及ぶことでO脚はひどくなり、強い痛みに加えて歩行が困難になることも。ひざ関節症クリニックが実施したwebアンケート(膝に痛みを感じている男女111名に調査)では、日常生活に支障が出ているという回答は66.7%と過半数を占めていました。実際、クリニックにも、日常生活や趣味に制限が生じて困っている方が相談のため、たくさん受診されています。

変形性膝関節症の病態変化

治療は原因と膝の状態を知ることから

変形性膝関節症末期のMRIそういった方に対する治療は、変形性膝関節症の症状を改善するためのものなのですが、どんな方法が適切なのかは原因や膝の状態によって異なります。当然のことと思われるかもしれません。しかし、来院される患者さまにこれまで通われていた病院での診断や治療法についてお伺いすると、原因や膝の状態をご存知の方はほんのわずか。医師は把握しているのでしょうが、ひざ関節症クリニックでは、患者さまも詳しく知ってこそ、治療の目的や意味を理解でき、本当の治療効果を引き出せると考えています。
だからこそ、MRI検査で詳しい関節の状態を確認しつつ、実際に膝の動きなども触診でチェック。その上での診断を、関節模型を用いたり図で示したりして、分かりやすくお伝えします。治療法については診断をもとに、患者さまのプライオリティを加味した方法を一緒に考えております。

原因

原因を探るためには、多角的な視点で診察する必要があります。なぜなら、変形性膝関節症の原因は1つではないからです。半月板損傷や靭帯損傷、捻挫や骨折といった過去の外傷や、関節リウマチや偽痛風などの病気が関係する場合は二次性に分類されますが、多くは原因が明確にはできない一次性の変形性膝関節症。50〜60代の発症が多いことから、老化の影響がまず考えられますが、関節への負担を軽減している膝周りの筋力の低下、膝への荷重が大きくなる肥満なども、代表的な危険因子です。他にも、性別(日本整形外科学会によると男女比は1:4)、膝に負担の大きいスポーツ歴、遺伝子、O脚なども変形性膝関節に関係していると考えられています。だからこそ、ひざ関節症クリニックでは、診察でADL(生活行動)の傾向についても、詳しくヒアリングさせていただいております。

症状

膝の関節水腫のMRI先にもお話したように、変形性膝関節症の最たる症状は、膝の痛み。椅子から立ち上がるとき、歩き始め、階段(特に下り)などで痛みが生じますが、変形性膝関節症の初期症状では、動き出すときに膝が固まってしまうこわばりや、正座や和式トイレに難儀する関節の曲げづらさ、伸ばしづらさなど、痛みを伴わない違和感が特徴的です。
関節内の炎症が強く出れば、膝に水がたまるケース(関節水腫)も少なくありません。膝裏にしこりのような異物を感じる、50〜70代に多いベーカー嚢腫という疾患も、膝の水たまりによるもので、変形性膝関節症が原因のひとつとされています。そして、強い炎症が続くと、安静にしていても膝の痛みを感じるように。また、炎症の影響で関節内の損傷も進行するため、骨にもダメージが及び、関節の変形(主にO脚)が顕著になっていきます。

▼初期症状について詳しく読む▼
「変形性膝関節症の初期症状に対して有効な手立てはあるのか」

検査と診断

膝の痛みが何によるものか診断するために行う検査としては、問診・視診・触診・徒手検査(筋力を判定する理学検査)に続き、レントゲン検査が一般的。必要があれば、MRI検査や血液検査、関節液検査も行われます。

変形性膝関節症では、レントゲンの画像から病期も診断。その際の指標のひとつが、Kellgren-Lawrence分類(K-L分類)という重症度を4段階に分類した基準です。K-L分類では、グレードⅡ以上が変形性膝関節症の診断となります。

変形性膝

▼グレードについて詳しく読む▼
「変形性膝関節症の重症度(グレード)はどう決まるか」

 

MRI検査で確認された関節浮腫レントゲン検査では、骨の変性や関節の隙間の残存具合などからグレード(進行度)を見当づけますが、実際にはそれだけでなく軟骨や半月板、さらには骨の中の変性なども関係します。膝に水がたまる関節水腫の有無も、膝の状態を正しく判断するためには確認が必要。こういった情報を得るために行うのがMRI検査です。例えば、ひざ関節症クリニックの患者さまのMRI検査では、骨髄浮腫という骨の中に炎症が認められるケースがしばしば見受けられます。関節浮腫が認められる場合は変形性膝関節症が進行しやすく、全体的に浮腫が見られる症例ではまったくないケースと比べて、人工関節置換術が必要となるリスクが有意に増加するという報告も[2]。こういったレントゲンでは確認できない情報まで踏まえて、膝がどのような状態か、どんな治療法が有効かを診断しています。

 

MRIのどのような画像でどういった状態を知ることができるかについては、こちらの解説動画も参考にしていただけるかと思います。
関節水腫や骨髄浮腫の他、軟骨下骨折、半月板の変性断裂などの状態もわかりやすくご覧いただけます。

治療法

変形性膝関節症の痛みの原因は、関節の炎症です。末期になってくると、痛みの感覚が記憶に残ることや慢性的な痛みで痛覚が敏感になることなども複合的に関係してきます。ただ、初期から通して痛みの発生源にあげられるのは、軟骨のすり減りによって炎症を起こした、滑膜という関節を囲う組織の内側の膜。そして、軟骨がすり減るのは、ひざ関節への負荷が大きいため。そのため変形性膝関節症の治療は、炎症を抑えることと膝関節への負荷を軽減すること、これらを目的としたものがメインとなります。膝に負担のかかる生活行動を改善するため、まずは生活指導。それから治療に入っていくわけですが、様々な治療法を大きくわけると保存療法と手術療法の2種類。症状や病態によりますが、基本的に第一選択として保存療法を提案する医師がほとんどです。

保存療法

変形性膝関節症の保存療法には、運動療法、薬物療法、物理療法、装具療法などがあります。なかでも、変形性膝関節症の治療としてエビデンスが確立されているのが、運動療法。国内外の変形性膝関節症ガイドラインでも症状の改善に効果的であるとして、高く推奨されています。膝に負荷がかからない体操からウォーキングや水泳などまで様々ですが、膝の状態によってどの方法が良いかは異なるため、医師や理学療法士の指示を受けて行うことが大切です。ひざ関節症クリニックでも、膝はもちろん、全身の使い方も拝見した上で、おひとりお一人に適した運動のレクチャーを行っております。

▼運動療法について詳しく読む▼
「変形性膝関節症の運動療法 〜その効果とトレーニングメニューを公開〜」

運動療法を積極的に行うためにも、痛みの改善が必要です。そのため、消炎鎮痛薬の服用やヒアルロン酸注射などの薬物療法、電気や超音波機器を使って物理療法でも痛みの軽減を図ります。ニーブレースや杖、足底板といった装具は、膝関節への負担を少しでも軽減するために併用します。

▼保存療法について最新情報を読む▼
「変形性膝関節症の新たな保存療法とは?」

 

保存療法の種類と特徴
メリット デメリット
薬物療法 保険適応で治療が受けられる 継続的に治療を受ける
必要がある
物理療法 運動以外で運動機能の活性化
が期待できる
痛みや可動域が改善しない
こともある
装具療法 痛みの軽減が期待でき、
動きやすくなる
装具がないと痛みが
緩和されない
運動療法 膝関節の負担要因
(血流や体重)の改善
適切な方法でないと
逆効果になることも

 

手術療法

手術療法が検討されるのは、変形性膝関節症の病期がグレードⅢ以上のケース、保存療法を6ヵ月以上続けても効果が見られないケースなどです。あくまで目安なので、例えばグレードⅡでも、生活がままならないくらいの強い痛みが出ている場合などでは、手術を提案されることはあります。ただ、基本的には患者さまが納得し希望されない限り、手術は行われません。

手術の種類は、関節鏡視下手術、高位脛骨骨きり術、人工膝関節置換術の3つ。

変形性膝関節症の3つの手術

関節鏡視下手術は、内視鏡を挿入し、損傷した半月板や軟骨の毛羽立ちを切除する手術。早ければ2〜3日での退院が可能なため、手術の中ではもっとも低侵襲ですが、この処置で改善が期待できるのは軽度の病態のみです。

高位脛骨骨切り術は、脛骨を切開して金属プレートなどを差し込み、骨の傾きを矯正するという手術。O脚が進行したケースに検討されることが多い手術ですが、適応はこの場合、関節の外側が正常に保たれているケースに限られます。関節を温存できる利点はありますが、骨の癒合には時間がかかるため、3週間ほどの入院が一般的です。

そして、変形性膝関節症の治療法として最終手段となるのが、膝関節を人工物に置き換える人工膝関節置換術です。損傷部分を取り除く手術なので痛みの大幅な改善がのぞめますが、人工物ゆえに15〜20年ほどでインプラントを入れ替える再置換手術を行う必要があります。

▼手術療法について詳しく読む▼
「膝の人工関節とは? 手術の決断前に知りたい重要事項」

 

変形性膝関節症の各手術と特徴
メリット デメリット
関節鏡視下手術 傷がちいさく入院も短い 大幅な改善が難しく
重度の症状は適応外
高位脛骨骨切り術 自分の関節を温存できる 骨が癒合するまでに
時間がかかる
人工関節置換術 大幅な痛みの改善と
歩行回復が期待できる
人工物ゆえに寿命があり
感染にも弱い

 

再生医療という選択肢

変形性膝関節症に対する再生医療の種類上記にご紹介した保存療法と手術療法は、保険適応で受けられる治療法です。ただ、変形性膝関節症には、自由診療で提供されている先進的な治療法もあります。そのひとつが、自己組織を用いて損傷した臓器や組織、機能の修復を目指す技術を用いた再生医療です。再生医療と聞くと大学病院や専門機関で研究されている技術をイメージされるかもしれません。しかし変形性膝関節症に対しては、抗炎症作用[3]や疼痛抑制[4]が報告されている再生医療が、すでに一般に向けても提供されています。それが、血液に含まれる血小板とその成長因子に着目したPRP治療やAPS治療、特定の細胞に分化していない幹細胞(なかでも脂肪由来幹細胞)を活用した治療などです。
ひざ関節症クリニックでは、変形性膝関節症の治療法として再生医療に可能性を見出し、2014年から取り扱いを開始。これまで、PRP治療の他、脂肪に含まれる細胞群(SVF)を用いた治療、脂肪幹細胞を培養してから注入する治療など、様々な再生医療を手掛けてきました。SVF治療では、グレードⅢ〜Ⅳの患者さまへの治療においても一定の効果が認められ、その報告は日本再生医療学会誌にも掲載されています[5]。つまり、保険診療の薬物療法では痛みがコントロールできなくなったケースにおいても、効果を期待できるケースがあるということ。そのため、侵襲の大きな人工関節などの手術による治療を、可能な限り遅らせるうえで有効な選択肢になり得ると考えているのです。

▼再生医療について詳しく読む▼
「変形性膝関節症の再生医療の効果と安全性」

▼再生医療についての専門家のコメントを読む▼
「専門家はどう見る? 変形性膝関節症の最新治療の今と展望」

変形性膝関節症にお悩みの方へ

大前提として、変形性膝関節症は進行すればするほど保存療法が効きづらくなっていきます。ひざ関節症クリニックに来院されるのはグレードⅣの患者さまが多く、先にお話したように改善が見られるケースは一定数確認していますが、初期〜中期など早期に受けた方が、良好な結果が得られていることも確かです。
そう言われると、グレードⅣで当院の治療を受けている人は一か八かなのかと思われるかもしれませんが、もちろんそういうわけではありません。冒頭でもお話したように、ひざ関節症クリニックではまず、MRI検査も行って膝の状態を詳しく診ることから始めます。その診断結果や、扱っている治療法で改善効果が期待できるか、もしくは難しそうか、包み隠さず情報共有。そして生活における優先順位なども加味しながら、より良い選択ができるよう一緒に考え、アドバイスいたします。
なじみのない治療なので不安も多いかと思いますが、だからこそ不安を払拭するため、膝をつき合わせた診療を心掛けております。患者さまが聞きたいことを聞けない、治療内容について理解できないようなことのないよう、時間も十分確保。治療法の長所や短所、料金面についても詳しくお話いたしますので、安心してご相談ください。

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