変形性膝関節症について

OA KNEE

【自分の脂肪と血液で治療】変形性膝関節症の再生医療の効果と安全性

RELEASE:2018-10-15
UPDATE:

従来からの保存療法以外で変形性膝関節症を治療する方法として、再生医療が注目されています。どのようなものがあり、どういった作用を期待できるのか。また、安全性は確保されているのか。気になる再生医療のポイントをお話します。

 

脂肪・血液由来の再生医療が変形性膝関節症に適応

変形性膝関節症の治療法として、様々なメディアで取り上げられるようになった「再生医療」。これは人間の持つ組織の働きによって、損傷した組織の修復や、低下した機能の補完を図るという先進的な医療です。内科的な疾患を治療するため研究・応用されている印象が強いかもしれません。しかし現在では整形外科領域、つまり外科的な疾患にも体細胞(組織となった細胞)や幹細胞(組織になる前の未分化の細胞)を活用した治療が用いられており、変形性膝関節症にも適応可能な治療が存在するのです。

2018年10月現在、実際に変形性膝関節症の治療法として提供されている再生医療は、脂肪と血液に由来するものが主流となっています。

 

脂肪由来の再生医療

脂肪組織を酵素で除外した間質血管細胞群(SVF:Stromal Vascular Fraction)。この脂肪由来の細胞群に数パーセント含まれるのが、再生医療において重要な意味を持つ、幹細胞です。幹細胞には特定の細胞に分化する能力があり、脂肪由来幹細胞(ASC:Adipose-Derived Stromal Cells)も例外ではありません。

具体的な治療法は、下腹部などから脂肪を採取し、そこから抽出したSVFを膝関節内に注射するというもの。膝関節の炎症を抑え、痛みを緩和する効果が期待できます。

脂肪由来幹細胞治療では脂肪を採取するため、30分程度の手術(美容外科の脂肪吸引の脂肪吸引量が少ないものというイメージ。採取量は両膝で200ml程度)を行いますが、メスで膝を切開する必要はありません。

 

当院では脂肪由来幹細胞を増やす「培養幹細胞治療」を提供

脂肪由来幹細胞を多く抽出し膝関節へ注入するためには、ある程度の脂肪量が必要です。ごく小さな処置ですが、高齢者や脂肪の少ない痩せ型の人には不安要素でもあるでしょう。そこで選択されたのが、少しの採取量(吸引脂肪量はさらに少ない20ml程度、10分程度で終了)から細胞数を増やす、培養という方法です。

当院では、幹細胞の抽出と培養を専門の細胞加工施設へ委託。6週間(法律で決められた感染症が無いかどうかの検査2週間を含む)ほどかけて培養したものを膝関節に注射する、培養幹細胞治療を提供しています。

幹細胞を培養した場合と培養しない場合で効果の違いがあるのか、当クリニックで行った実際の治療データを集め、2019年の再生医療学会にて発表しました。詳しくは下記記事をご参照ください。
[詳細]膝の幹細胞治療について、培養した場合の効果を検証

培養幹細胞治療の流れ

 

血液由来の再生医療

血液を利用した再生医療の代表的なものが、PRP療法です。PRP(Platelet Rich Plasma)とは、多血小板血漿のこと。血小板は、皮膚に傷ができたときなどに血液を凝固させる役割を果たす組織で、この血小板が固まる際には様々な成長因子が放出されます。そうした成長因子が、損傷した組織の修復に大きく寄与すると考えられているのです。

PRP療法では、採取した血液を遠心分離にかけPRPを生成し、膝関節に注入します。損傷した組織の修復を促す作用を持つTGF-βやCTGFといった成長因子の働きによって、炎症や痛みなど関節内のトラブルを改善するのが狙いです。

最近ではPRPをさらに精製して濃度を高め、効果を増大させたAPS(Autologous Protein Solution)治療も臨床に用いられ始めています。

PRPに含まれる成長因子

 

当院ではPRPを濃縮した「PRP-FD」を提供

PRP-FD注射当院で提供しているのは、PRP-FD注射。PRP療法と名前は似ていますが、手法が少し異なります。PRP療法は成長因子を含む多血小板血漿(血小板を豊富に含む液体成分)を膝関節に注射しますが、PRP-FD注射では、多血小板血漿から取り出した成長因子を濃縮して注入します。
法律上での再生医療は細胞治療を想定していますが、PRP-FDは製造工程で無細胞になるため、厳密には再生医療ではありません。しかし当院の症例においてその作用はPRPに遜色なく、また無細胞化しているためか、治療後の痛みが少ないという肌感があります。
また、PRP-FDは無細胞化しているためか、治療後に細胞が作用する際に起こる反応痛が少ないという肌感があります。

(2019年4月25日追記)
当院の症例比較(PRP1415膝/PRP-FD3752膝)においては、痛みを数値化したVASスコアの平均値がPRP-FDの方が有意に改善されていたことが分かっており、第18回日本再生医療学会総会でも発表しました。

 

再生医療の安全性に問題はあるのか?

変形性膝関節症の治療に再生医療という選択肢が加わりました。治療内容や期待できる効果は理解できても、最後に不安要素として残るのは、新しい治療だけに安全性は確保されているのかという点ではないでしょうか。

「自身の脂肪や血液に由来する治療のため拒絶反応が起こりにくく、副作用の可能性も低い」これは再生医療というワードに付随する文言です。納得はいきますが、脂肪由来幹細胞治療やPRP治療といった、自由診療で提供されている再生医療と、大学病院等で研究段階の再生医療が何故あるのでしょう。

 

研究段階の治療は保険診療を目指しているものが多い

研究段階の再生医療と聞いてまず思い浮かべるのが、京都大学のiPS細胞を活用したものではないでしょうか。iPS細胞でマウス実験で変形性膝関節症の研究されていますが、まだ非臨床研究。ガン化のリスクについてなど、主としてまず安全性が確認されている段階と言えるでしょう。

その他にも、様々な大学で再生医療分野の研究がなされています。なかには、臨床試験や治験を実施しているものも。具体的には下記のような治療があげられるのですが、こちらは自由診療ではなく、将来的に薬機法のもと保険診療での提供を目指しているため、臨床研究を重ね、さらなる安全性と有効性が確認されているのだと考えられます。

(2020年1月15日追記)
昨年12月、京都大学の研究チームが、iPS細胞からつくった膝軟骨移植の臨床研究計画を申請しました。ただ、先日にも分化時に一部の遺伝子に異常があったなどの報道があり、同時に進められているがん化の有無を画像で確認する仕組みや、傷の少ないiPS細胞の作成技術の確立など、リスク回避の研究の動向にも注目が集まっています。

 

滑膜由来の幹細胞を活用した治療

膝関節を覆っている滑膜を採取し、そこから抽出した幹細胞を膝関節に注入する治療です。東京医科歯科大学の研究で、滑膜由来幹細胞にも軟骨保護や炎症抑制の効果が期待できると明らかになり、実用に向けて研究がなされています。

 

軟骨細胞を培養して移植する治療

自身の軟骨を採取して増やしたものを損傷した部位へ移植する、自家培養軟骨移植術という治療法があります。富士フィルムがCMで紹介していた、広島大学研究のあの技術です。変形性膝関節症には未適応ですが、現状、スポーツや事故などによって軟骨を損傷した外傷性軟骨欠損症や、離断性骨軟骨炎という疾患にのみ保険診療で提供されている治療法です。

また、東海大学では患者の身体から採取・培養した軟骨をシート状にして欠損部に移植する軟骨細胞シートという治療も研究中。軟骨組織の再生に寄与することができると期待されています。

(2019年4月25日追記)
東海大学の「自己細胞シートによる軟骨再生治療」は、2019年1月10日に開催された厚生労働省「第71回先進医療会議」において、先進医療とすることを承認されています[1]。

 

当院が自由診療で脂肪由来幹細胞治療を提供する理由

さらに研究を重ねれば、上記のような治療が保険診療で提供される世の中も夢ではありません。ただ、保険診療の適応となるのを長年待っている間にも、変形性膝関節症の痛みに苦しむ人は増え続けます。厚生労働省の発表によれば、潜在的な患者を含めると国内で推定3000万人がこの疾患を抱え、そのうち1000万人に症状が出ているという状況です[2]。保険診療で手軽に誰でも受けられる治療を広く提供するのも、ひとつの医療機関の姿でしょう。ただ同時に、この状況を放置することもできません。今この瞬間に足枷となっている膝の痛みを取り除き、より良い生活を長く送っていただくため、私たちひざ関節症クリニックは自由診療で再生医療を提供しているのです。

 

自由診療の再生医療も安全性は確保されている

脂肪由来幹細胞治療やPRPなどの血液療法も、大学病院で研究されてる治療法と異なるからといって安全性の問題が懸念されるわけではありません。と言うのも、どちらの治療法も国内外の臨床において実施されており、変形性膝関節症に対して効果があったという報告も多数。それだけでなく、日本においては法律でも一定の安全性が確保されています。

 

再生医療等安全性確保法の施行

厚生労働省海外では、再生医療が医師の裁量のもとで提供されていることもしばしば。しかし、日本では2014年に「再生医療等安全性確保法」という法律が施行されました[3]。再生医療の安全性確保について法律で定めたのは、日本が世界初なのです。この法律には「再生医療を提供するには、厚生労働省に提供計画を提出する必要がある」といった規定が含まれています。そのため提供計画が受理されない限り、病院やクリニックが再生医療を臨床に用いることはできません。

この審査がとても厳しいもので、まず治療目的(対象となる疾患など)に対して、どういった治療をどのような手順で行うかなど、40項目以上もある書類を作成。文献や資料など、十分なエビデンスを添えて提出します。それを、国が認定した専門の委員会が内容を確認。指摘があれば差し戻して修正し、提出する、の繰り返しとなります。こうした厳しい審査を経て厚生労働大臣に受理されて初めて、再生医療を提供できるようになる、というわけです。ただ、提供の許可が下りた後も、委員会への定期報告義務があります。細かい症例数や重篤な副作用の事例の有無など、1年毎に報告書を提出しなければなりません。

つまり、自由診療の中でも医師の裁量に任されたその他の治療法とは異なり、現在提供されている再生医療は、このような厳しい審査を経て臨床で用いることができるようになったものということです。

 

膝の痛みの治療は選択肢を広く持つことから

きちんと法のもとで安全性が確保されているのが、変形性膝関節症の再生医療。現在提供されている治療は、厳しい審査を経てしっかりと安全性が確認されているものなのだと、お分かりいただけたことでしょう。

ただ、まだ不安は払拭されないという方もいらっしゃるかと思います。そんな方は、まずカウンセリングにお越し下さい。お膝の状態も丁寧に診察した上で、新たな選択肢となった再生医療について、理解のいくまでしっかりとご説明させていただきます。まずは治療法を知り、ご自身の膝の痛みの選択肢を広げることが、理想とする将来につながっていると思うのです。

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