変形性膝関節症について

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変形性膝関節症に対するPRP治療とPRP-FD注射の効果比較

RELEASE:2019-04-26
UPDATE:

ひざ関節症クリニックでは、日々の診療はもちろんのこと、再生医療などの先進的な治療法を普及させるための活動も行っています。その中で、毎年行われる再生医療学会には積極的に参加。診療で得られたデータを公開するなどし、医療関係者への情報提供に務めています。

2019年3月に神戸市で行われた第18回再生医療学会でも、最新の情報を発表して参りました。この記事では、血液を使ったPRP治療と、新たに採用したPRP-FD注射の効果を比較した研究結果について報告します。

※PRP-FD注射の進行具体ごとの効果についてのデータも「PRP-FD注射の効果は変形性膝関節症の進行度でどう変わるのか」の記事でご紹介しております。

研究の背景

PRP治療とは、傷の修復に働く血小板を多く含むPRP(多血小板血漿;たけっしょうばんけっしょう)を自己血液から抽出し、ひざへ投与する治療法です。炎症や痛みを緩和する効果があることは世界的な論文でも認められており[1]、2016年6月まではひざ関節症クリニックでも提供していました。現在では、治療の工程が少し異なるPRP-FD注射を提供しています。

PRP-FD注射も血液成分を使った治療であることに変わりはありませんが、血小板が作用するときに放出される”成長因子”という物質のみを濃縮して使用。含まれる成長因子には、傷の修復に役立つもの、炎症を抑えるものなど、さまざまな種類があることが分かっています。その成長因子を濃縮したPRP-FD注射は、PRP治療の効果をより高めることを目指した治療というわけです。

この度の再生医療学会では、かつて当院でも行っていたPRP治療と、現在提供しているPRP-FD注射の治療成績を比較したデータを発表しました。対象は当院で治療を受けられた、変形性膝関節症の患者さまです。

PRP治療とPRP-FD注射は工程が異なる

効果の比較を見る前に、まずPRP治療とPRP-FD注射では具体的にどのような工程の違いがあるのか、ご説明します。

PRP治療
約70mLの採血を行い、遠心分離を行います。そこからPRPを抽出し、そのまま患部に注射します。全ての工程を院内で行うことが可能です。

PRP-FD注射
採取した約40mLほどの血液を、専門の加工施設へ送ります。PRPを抽出するまでは同様の流れですが、抽出したPRPに含まれる成長因子のみを、特殊な技術を用いて濃縮。その後フリーズドライ加工を施すことで、長期の保管も可能となっています。当院では、精製したPRP-FDを生理食塩水で溶解してから患部に注射しています。

※なお、記事内の図中にある表記「PFC」は成長因子を濃縮したもので、PRP-FD注射によって膝に注入する物質を意味します。

PRP治療とPRP-FD注射の工程の違い

PRP-FDが、PRPよりも高い効果を示した

記事の最後に掲載している条件を満たした当院の患者さまに、PRP治療とPRP-FD注射を実施。その後6か月間の有効性と安全性について検討した結果、ひざの痛みの改善という点でPRP-FDのほうが高い効果を示し、安全性にも大きな問題はないことを確認しました。

使用したのは、世界的に用いられているVAS(ヴィジュアル・アナログ・スケール)というスコア。痛みの度合いを数値化・可視化できる有用な指標で、数値が高いほど痛みも強いことを表します。当院でもVASを用いて、治療から一定の期間が経過した際、患者さまの膝の状態を確認しています。

PRP-FDはPRPよりひざの痛み改善効果が高い

こちらのグラフから、PRP治療のグループとPRP-FD注射のグループ、いずれも膝の痛みは時間とともに改善していることが分かりますが、より顕著な改善を見せたのはPRP-FD注射のグループでした。

また、PRP-FDについてはKOOS(クース)という指標でも評価。これは、痛み、症状、運動機能、日常生活動作、生活の質といった観点で効果を測定するものです。このKOOSについても、PRP-FD注射は高い効果を示しました。

変形性膝関節症の進行度別ではどうか

痛みの改善効果は、PRP-FD注射のほうが高いことを確認しました。続いて、変形性膝関節症の進行度を示すグレード別では効果に違いが出るのか、というところにも焦点を当てました。変形性膝関節症と診断されている方であればご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、グレードは1から4まであり、数値が大きくなるほど変形性膝関節症が進行していることを意味します。下図の”KL grade”とは、このグレードのことです。

PRP-FDとPRPの効果を変形性膝関節症のグレード別に検証

グレード1から4それぞれに対するPRP-FD注射グループ(青)、PRP治療グループ(オレンジ)の結果を示したのが、こちらのグラフです。VASの平均改善率はPRP-FD注射のグループが66±23%、PRP治療のグループが37.9±38.4%となっており、どのグレードでもPRP-FDのほうが改善率が高いことが分かりました。

また、どちらの治療法でもグラフの左側のほうがつまり膝の変形が軽い(グレードが低い)ほど、痛みの改善率が高いことも確認できます。

※PRP治療は、グレード4の方に対しては行わなかったため、改善率も0となっています。

いずれの治療法でも重篤な副作用なし

副作用としては、関節内の感染、癒着による関節可動域制限、血栓、敗血症、アレルギー反応、ショック反応、関節内出血といったものが考えられましたが、PRP治療とPRP-FD注射のいずれも、こうした重篤な副作用を引き起こすことはありませんでした。

また、注射後の痛みや腫れといった軽度の副作用は、一般的に行われているヒアルロン酸注射などと同様に数件が確認されましたが、いずれもロキソニンや抗生剤といった内服薬で改善しました。安全性に大きな問題はないと考えられます。

早期の治療で良好な結果が得られる

このたびの治療比較で分かったのは、PRP治療よりもPRP-FD注射のほうが痛みの改善効果が高いことと、どのグレードにおいてもPRP-FD注射のほうが高い効果を示すことでした。

さらに、このデータから分かったことがもう一つあります。それは「膝の変形が少ないほど効果も高くなる」ということです。変形性膝関節症に限らず、どの疾患でも同様ですが、耐えられなくなるまで我慢するよりも、早期に治療を行ったほうが良好な結果が得られます。ぜひ早めに治療を検討していただきたいと考えています。


治療・データ集計の対象

治療の対象・データ集計の対象は下記の条件を満たした方とし、人数や数値は表の通りでした。

•変形性膝関節症の方(診察、MRI、X線などで確認し、進行度別に分類)
•全国の医療機関にて、保険診療で行われている保存的治療を受けたが、十分な効果のない方
•自由診療であると理解している方
•関節リウマチなど、炎症を伴う別の疾患に罹っていない方
•2016年7月以降、半年間に当院でPRP-FD注射を受け、6ヶ月の経過観察を終了した方
•2016年6月以前に当院でPRP治療を受けた方

PRP-FD注射、PRP治療それぞれの群

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