変形性膝関節症について

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変形性膝関節症の新たな保存療法とは?

RELEASE:2018-10-12
UPDATE:

変形性膝関節症は進行性。診断を受けたら早めに治療を始めなければなりません。多くの場合にまず行うのが、手術ではない「保存療法」。どういった目的で行われるのかを解説したうえで、新たに登場した期待の保存療法をもう一つ、お伝えします。

裏付けがあるのは「保存療法」

保存療法とは「手術ではない治療」を意味します。変形性膝関節症と診断をされたら、基本的にはまず保存療法で対処することが多いでしょう。この疾患は進行性ですから、進行を防ぐための治療という位置づけです。病状が悪化してしまうと、いずれは骨切り術や人工膝関節置換術といった手術しか方法がなくなってしまいます。

進行度を示す「グレード」

変形性膝関節症の治療を考えるうえで重要なのが、進行度を示すグレードという指標。グレード1が予備軍、2が初期、3が進行期、そして4が末期を表します。個人の膝の状態によっても異なりますが、一般的にグレード3以上が手術を勧められる目安です。

[詳細]変形性膝関節症の重症度(グレード)はどう決まるか

変形性膝関節症の進行度を示すグレード

次に、それぞれの保存療法について解説します。

薬物療法

変形性膝関節症の薬物療法変形性膝関節症と診断を受けたということは、痛みを始めとする何らかの症状が出ているはずです。多くの場合、痛みの原因は、すり減った軟骨の欠片が滑膜(膝関節を覆っている膜)を刺激して起きた炎症。これに対してはまず消炎鎮痛薬の処方や薬剤の注射などを用いて、炎症に直接アプローチすることが多いでしょう。

消炎鎮痛薬の処方

NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)やアセトアミノフェンなどが最も一般的に使われています。ロキソニン、ボルタレン、アスピリンなどが代表的で、目的としては、痛みの原因である炎症を抑えることです。NSAIDsは抗炎症に優れた効果を発揮しますが、長期間の使用は副作用の可能性も否定できません。しばらく服用を続けても効果が見られない場合、オピオイドやトラムセットなど、やや強めの鎮痛薬が処方されることがあります。

ヒアルロン酸注射

もともとヒアルロン酸は、関節の中を満たす関節液に含まれている成分で、膝の滑らかな動きを助ける役割を果たしています。しかし、変形性膝関節症になるとヒアルロン酸は減少。次第に膝を動かしにくくなり、骨同士がぶつかり合って痛みが生じたり、ゴリゴリと音が鳴ったりするようになります。

これを解消するため、膝関節内にヒアルロン酸を直接注射するのがこの治療。整形外科では広く行われています。週に1度の注射を1か月ほど継続し、その後は2〜4週に1回の頻度で行うことが多いでしょう。

ステロイド注射

ステロイドは、抗炎症に加え鎮痛作用も持ちます。膝に強い痛みがあったり水がたまったりしていると、ヒアルロン酸ではほとんど効果がない場合も多々。このようなケースでは、ステロイド注射を行うことがあります。ステロイドとは本来、副腎という臓器から生成される副腎皮質ホルモンという物質のこと。この成分と似たものになるよう合成した薬剤が、注射に用いられるのです。

「ステロイド=副作用」というイメージを持つ人が多いかもしれませんが、現在では適切な管理のもとで注射が行われているため、過度に心配する必要はないでしょう。とは言え、ヒアルロン酸よりも強い薬であることには変わりないため、適切な使用量を守らなければなりません。また、ステロイドの使用については医師によっても見解が分かれるため、きちんと説明を聞いておくことをおすすめします。

運動療法

変形性膝関節症の運動療法おそらく主治医の方から説明があったのではないかと思いますが、運動療法は非常に重要。保存療法の中でもエビデンス(根拠)が確立されています。膝周りの筋肉を鍛えるのが目的ですが、特に重要なのが太もも前側の大腿四頭筋です。

膝が痛くなると「動いてはいけない」と思い、じっとしているようになります。しかしこれは、自ら悪循環を形成しているようなもの。というのも、膝にかかる負荷を吸収しているのが膝周辺の筋肉だからです。運動をしなければ筋力は衰えるため、安静にしていると言えど、膝への負荷は増大してしまいます。運動療法の目的は、こうした悪循環ではなく、好循環を作ることと言えるでしょう。病院では理学療法士やトレーナーの指導のもと行えるため安心です。

膝周りの筋力訓練は重度の変形性膝関節症にも有効

イランの大学による興味深い研究報告があります[1]。これは、変形性膝関節症の患者を、運動療法を行うグループと行わないグループに分け、開始1か月、3か月、12か月後の痛みを数値化したというもの(双方のグループが薬物療法・理学療法を平行して実施)。その結果、運動療法も実施したグループでは特に、痛みの数値に有意な改善が見られたそう。さらに、歩行や階段昇降といった日常生活動作(ADL)をはじめとする運動機能の改善も確認できたと言います。またこの論文では、変形性膝関節症が進行して重度(グレード3〜4)の状態であっても、運動は効果的であると示唆されています。

さらに、オーストラリアの大学の研究によって、接地状態でのトレーニングに消炎鎮痛薬と同等レベルの効果が期待できるという報告もなされました[2]。薬剤の継続的な使用に不安があるという人でも、運動であれば気兼ねなく続けることができるでしょう。

[詳細]変形性膝関節症の運動療法【その効果とトレーニングメニューを公開】

装具療法

変形性膝関節症の装具療法装具とは、身体に装着することで身体機能を補助するもの。変形性膝関節症に用いられる装具としては、杖やサポーターなどが代表的です。「変形性膝関節症に対し薬物療法のみ行った場合と比べて、装具療法も同時に行った場合、より痛みの改善度が高かった」とする報告もあります[3]。

装具の種類

装具には様々な種類があり、変形性膝関節症の進行具合や症状、患者の希望などに合わせて使い分けが可能です。

疾患の初期から末期まで、広く使用可能です。T字、松葉杖、4点杖など、様々な種類があります。体重を分散することで、膝関節にかかる負荷を軽減し、膝の痛みを緩和するのが目的です。

サポーター

柔らかく着脱しやすいものが多いため、主な目的としては痛覚の反応を遅らせること、患部を温めることと言えるでしょう。

ニーブレース

変形性膝関節症の進行期に使われることが多い装具です。支柱付きのものもあり、サポーターよりも装着感は強いでしょう。膝関節をしっかり安定させる効果が期待できます。

足底板

足底板(そくていばん)とは、靴の中敷きのこと。地面からの衝撃を吸収したり、O脚やX脚を矯正したりするのが目的です。日本人の変形性膝関節症はO脚に進行することが多いため、足底板の外側に厚みを持たせることで、膝の外反の矯正を試みます。病院で理学療法士の指導のもと作製することが多いでしょう。疾患が進行すると、次第に効果は薄くなってしまいます。

従来の治療とこれからの保存療法

繰り返しになりますが、保存療法は「手術ではない治療法」という意味です。その方法や効果についてのエビデンスは充実してきていますが、一般的な臨床の治療法としては目覚ましい進歩がないようにも感じます。それでも、保存療法はずっと現状のままというわけではなさそうです。

従来:保存療法で効果が見られなけば手術

変形性膝関節症の手術高齢の方は、変形性膝関節症の末期になって初めて病院を受診されることがあります。こうしたケースを除き、一般的には保存療法を6か月以上続けても痛みが改善されない、悪化するといった場合に手術を検討することになるでしょう。目安としては、進行度がグレード3以上とされています。

保存療法で症状のコントロールができなくなってくると、骨切り術や人工膝関節置換術などの手術以外に、現在の保険診療には効果的な方法がありませんでした。本当は嫌でも、諦めて手術を受けなければならないケースもあったでしょう。実際に「手術を受けたくない」という理由で当クリニックへ来院された患者さまも、多数いらっしゃいます。

現在:保存療法の新たな選択肢「再生医療」

変形性膝関節症の新しい保存療法とは上述の通り、薬の服用やヒアルロン酸注射、運動などを継続しても効果がなければ、これまでは手術療法しか方法はありませんでした。しかし近年では、保存療法の一つに再生医療という選択肢が登場したのです。再生医療とは、自身の組織を用いて、疾患や損傷した組織の修復を試みる治療のこと。臨床で提供されているPRP療法や脂肪幹細胞治療が、変形性膝関節症にも適応可能です。

これらの治療法は、手術を受けるか否かで迷っている方の新たな選択肢となりつつあります。また、変形性膝関節症の病態が軽度〜中度(グレード2から3程度)には、特に高い効果が期待できます。そのため、手術目前というわけでなくとも、十分に検討の余地がある治療法と言えるでしょう。

PRP療法

PRPとはPlatelet Rich Plasmaの略語で、多血小板血漿を意味します。カギとなるのが、血液中の血小板という物質に多く含まれる、傷の修復を促す成長因子。この成長因子は、PRPには通常の血液の3〜5倍以上も含まれているとされ、損傷した組織の修復に効果的に働きかけることができるのです。膝関節内でも、炎症を抑え痛みを緩和する効果が期待できます。

PRPに含まれる成長因子

治療法はとてもシンプルです。まず血液を採取して遠心分離を行い、多血小板血漿のみを抽出。それを膝関節内に注射するというものです。

ちなみに当院が提供するのは、PRPから成長因子のみを取り出して濃縮し、フリーズドライ加工を施したPRP-FDという治療法。これは血液ではなく成長因子を体内に戻すので、厳密には再生医療の範疇からは外れます。しかし、当院の症例を見る限り、その効果はPRP療法と比べて遜色ありません。

脂肪幹細胞治療

人間の脂肪には幹細胞という組織が含まれています。この幹細胞を含んだ間質血管細胞群(SVF:Stromal Vascular Fraction)を抽出し、膝関節内に注射するのがこの治療。こちらも関節内では抗炎症、疼痛緩和の作用が期待できます。

間質血管細胞群SVFによる治療

まず、お腹や太ももから脂肪を採取します。セリューションを用いて遠心分離させ、SVFを抽出。それを膝関節に注入するという流れです。脂肪幹細胞治療では脂肪を採取するため、10分程度の小さな手術を行います。ただ、これは人工膝関節置換術や高位脛骨骨切り術のような大手術ではありません。細いカニューレを使うため身体への負担は少なく、入院も不要です。

当院では、SVFから幹細胞(ASC:Adipose-Derived Stromal Cells)を取り出して培養したものを膝関節に注入する、培養幹細胞治療を提供しています。少ない脂肪採取量でも多くの幹細胞を得ることができるため、より負担の少ない方法と言えるでしょう。

今はまだ限られた治療法でも…

上述のPRP療法や脂肪幹細胞治療。多くの病院でも受けられるようになってきたとは言え、まだまだ提供している医療機関は限られています。それでも、侵襲が小さいことや副作用の危険性が少ないことなどから、当院でも安心して治療を受けていらっしゃる方が多数。今後、一般的な治療法として広く浸透していくかもしれません。詳細を知りたいという方は、お膝の状態も加味しながらご説明しますので、一度カウンセリングにお越しください。

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